AIを“優秀なアシスタント”に。専門家の仕事を本質的な業務に集中させるための全社AI活用事例【TOMAコンサルタンツグループ】

導入前の課題
- 議事録作成や提案資料の仕上げ、契約書の確認、財務資料の分析など、専門家が判断や提案に入る前の周辺作業に多くの時間と人手がかかっていた
- 部門や担当者によって業務内容や使用する資料が異なり、効率的な進め方や成果物の品質にばらつきが生まれやすかった
- 現場で生まれた改善案やノウハウを仕組みに落とし込み、他部門へ横展開するまでに時間を要していた
導入後の成果
- 議事録、提案資料、文書チェック、財務分析などの作業を効率化し、案件によってはアシスタントの同席が不要になるなど、専門家が本来の業務に使える時間が増えた
- 部門ごとの業務や資料の形式に合わせたエージェントやスキルを整備し、作業時間の短縮と成果物の品質向上を両立できるようになった
- 部門横断の「生成AI活用プロジェクト」と「カイゼンカード」を通じて現場の要望を集約し、効果的な使い方を仕組みとして社内へ広げる流れを構築した
【企業紹介】
- 会社名:TOMAコンサルタンツグループ株式会社
- 事業内容:税務・会計、人事・労務、経営、ITなどの総合コンサルティング
- 従業員数:約200名
- 利用サービス:JAPAN AI AGENT/JAPAN AI CHAT/JAPAN AI SPEECH
税理士や公認会計士、社会保険労務士、経営コンサルタント、ITコンサルタントなどの専門家が約200名在籍するTOMAコンサルタンツグループ株式会社。会計事務所を原点に専門領域を広げ、現在は中堅・中小企業の幅広い経営課題に応える総合コンサルティングファームとして、1,200件以上の顧問実績で培った高品質なワンストップソリューションを提供しています。
同社では以前から、RPAやクラウドサービスを積極的に活用し、定型業務や非効率な作業の削減を進めてきました。生成AIの進化を受けて次に目指したのは、「答えのある仕事」をAIに任せ、専門家が課題発見や判断、提案といった本質的な業務に、より多くの時間を使える環境です。
一方で、税務・会計から人事、経営やITまで業務が多岐にわたるため、パートを含めた約200名の全社員が利用する全社共通のAI基盤を選ぶことは簡単ではありませんでした。セキュリティと幅広い業務への発展性を評価してJAPAN AIを導入し、現在は議事録から提案資料、財務分析まで活用を広げています。
今回は、ITコンサル事業部を統括し、全社の生成AI活用プロジェクトを率いる取締役の持木健太さんに、選定の背景から全社活用を広げる仕組み、専門家の仕事に生まれた変化までお話を伺いました。

▶︎導入前の課題
専門領域もITリテラシーもさまざま。全社員が使うAI選びの難しさ
―――JAPAN AI:まず、TOMAコンサルタンツグループの事業と、生成AIの導入を検討した背景を教えてください。
――持木氏
当社は会計事務所からスタートし、社会保険労務士や経営コンサルタント、ITコンサルタントなど、経営課題に対する解決策を提供できる部門を少しずつ増やしてきました。現在は、中堅・中小企業の幅広い課題にワンストップで対応する総合コンサルティングファームとなっています。
私が統括するITコンサル事業部も、もともとはお客様向けのITコンサルティングが中心でした。ただ、外部の業務改善を支援している以上、自社の改善にも取り組もうということで、10年ほど前から社内のDXも推進しています。
生成AIについても、単に新しいツールが登場したから導入したわけではありません。当社では以前から、非効率な作業を減らし、システム化できる業務は積極的にシステムへ移していく方針がありました。
税務や労務には、法律や過去の事例に基づいて判断する、いわば「答えのある仕事」が少なくありません。現時点ではAIが誤った回答を出すこともありますが、今後はこうした領域で、人よりも速く正確に処理できる場面が増えていくと考えています。
だからこそ、AIに任せられる業務はAIに任せ、人はお客様の課題を発見し、改善策を考え、将来に向けた判断を支援する仕事に集中する。生成AIは、そうした働き方への転換を進めるために欠かせないものだと考えました。
―――JAPAN AI:数あるサービスの中から、JAPAN AIを選んだ理由は何だったのでしょうか。
――持木氏
導入前は、議事録に特化したサービスも含め、さまざまなAIツールを試していました。ただ、LLMごとに得意・不得意があり、短期間で性能や評価も変わります。その中から「全社で使うならどれがよいのか」を判断するのは簡単ではありませんでした。
特定のLLMや用途に絞ってしまうと、より性能の高いモデルが登場したときに、ツール自体を見直さなければならない可能性もあります。その点、JAPAN AIであれば、一つの環境で複数のLLMを用途に応じて使い分けられる。変化の速い生成AIの進化を、継続的に業務へ取り込める点は重要だったと思います。
選定にあたって比較したのは、セキュリティと機能、発展性、コストです。その中でも、セキュリティは比較項目というより前提条件でした。お客様の財務情報や契約情報などを扱うため、安全性を確保できないシステムは、その時点で選択肢から外していました。
そのうえで重視したのが発展性です。当社には税理士、社会保険労務士、経営コンサルタント、ITコンサルタントなど、さまざまな専門家が在籍しています。PowerPointで提案資料を数多く作る部門もあれば、ExcelやPDFの財務資料を読み込み、分析する部門もある。一つの用途に特化したツールでは、全社での活用を広げにくいと考えていました。
当時は、複数のLLMを利用できる別のサービスを全社導入する直前まで検討していました。ところが、展示会でJAPAN AIを知り、自社用のAIエージェントを作成できることがわかりました。チャットで質問に答えてもらうだけではなく、自社の業務に合わせて活用方法を作り込める。そこに大きな魅力を感じました。
JAPAN AI SPEECHによる議事録作成に加え、各部門の課題に合わせてAIエージェントを作成できること、将来的にkintoneなどの外部システムとの連携も見込めること。特定の業務だけで終わらず、全社のさまざまな業務へ活用を広げていける点が、最終的な決め手になりました。

▶︎導入後の変化
アカウント配布で終わらせない。現場発で広がる全社AI活用
―――JAPAN AI:導入後は、どのような体制で全社活用を進めていますか。
――持木氏
現在は、パート社員を含む全員に、入社時からJAPAN AIのアカウントを配布しています。ただ、アカウントを渡すだけでは、自然に活用が進むわけではありません。当社でもITリテラシーには幅があり、新しいツールをマニュアルも見ずに試す社員もいれば、システムが変わるたびに戸惑う社員もいます。
そこで、ITコンサル事業部だけでなく、税理士部門や社会保険労務士部門などからもメンバーを選出し、全社横断の「生成AI活用プロジェクト」を立ち上げました。私がリーダーを務めています。
IT部門だけで活用方法を考えるのではなく、各部門が抱えている課題を拾い、AIで解決できないかを一緒に考える体制です。
当社には以前から、社員なら誰でも業務上の問題や改善案を提案できる「カイゼンカード(改善)」という仕組みがあります。現在は、「この作業をAIで効率化できないか」「こうしたエージェントを作ってほしい」といった要望も、カイゼンカードを通じて寄せられるようになりました。
そうした要望を、ITコンサル事業部やAIに詳しい社員が、エージェントやスキルとして形にしていく。現場の課題を起点に活用方法を生み出し、効果が見えたものを社内へ広げていく流れができつつあります。
―――JAPAN AI:現在、特に活用が進んでいる業務を教えてください。
――持木氏
代表的なものの一つが、議事録作成です。以前は面談にアシスタントが同席し、人が議事録を作成していました。ただ、すべての面談がアシスタントの学びにつながるわけではなく、内容によっては、議事録を作るためだけに一人をアサインしている状態でした。
現在はSPEECHが議事録を作成するため、案件によってはアシスタントを同席させる必要がなくなりました。議事録の作成時間が短くなっただけでなく、面談に必要な人数そのものを減らせたことは大きな変化です。
最初に全社向けに展開したエージェントは、「情報システム問い合わせボット」と「人事総務問い合わせボット」でした。社内ルールに関する問い合わせは多く、新入社員はもちろん、既存社員でも、たまにしか行わない手続きはわからなくなることがあります。必要なときにエージェントへ質問すれば回答が得られるため、問い合わせる側と回答する側の双方の負担を減らせています。
専門業務では、税務申告ソフトなどの既存システムだけでは自動化しきれず、担当者が手作業で補っていた工程にもAIを活用しています。たとえば、医療費控除に必要な大量の領収書を所定の形式にまとめる作業や、各種資料の読み取り、文章のチェックなどです。
M&Aに伴う財務デューデリジェンスでは、大量の財務資料を読み込み、複数のスキルを組み合わせて分析結果を出すエージェントも作成しています。担当者からは、分析にかかる時間を従来の10分の1以下まで短縮できる手応えも出ています。
契約書や提案書のチェックにも効果を感じています。特に、誤字脱字や表記など形式面の確認は、人が行うよりも速く、精度も高い。最近では部下から資料が上がってくると、「提出前にAIでチェックしたか」と確認することも増えました。
提案資料の作成も大きく変わりました。以前は、コンサルタントが構成や骨子を作ったうえで、アシスタントにPowerPointの作成を依頼していたため、完成までに数日かかることもありました。
今は骨子ができていれば、画像生成も活用しながら、約30分で提案に使える水準まで形にできるケースがあります。作成時間が短くなっただけでなく、資料の品質も上がっています。
当社では、部門ごとに資料の配色やテイストなど、一定のルールがあります。それらをあらかじめエージェントに設定しておけば、部門のブランドイメージに沿った資料を生成できます。作成する人によって、資料の見た目が大きくばらつきにくいことも、実務では助かっています。
現在は、こうした使い方を私個人にとどめず、部門全体で活用できるエージェントとして整備を進めています。

TOMAコンサルタンツグループで作成したエージェント画面。現在約32のエージェントが作成・利用されている。
AIを”優秀なアシスタント”に。蓄積した知見を、次の提案と人材育成へ
―――JAPAN AI:今後、さらに進めたい活用はありますか。
――持木氏
一つは、kintoneとの連携です。当社では、お客様との面談記録を「業務報告書」としてkintoneに蓄積しています。現在は、JAPAN AIで作成した議事録を、そのままkintoneへ自動登録できる形を目指しています。
蓄積した面談記録は、単に保管するだけではなく、次の提案に生かしたいと考えています。過去にどのような話をしたのかを顧客ごとに整理し、特定のテーマやキーワードに関するやり取りを抽出できれば、お客様の状況やニーズを踏まえた提案準備がしやすくなります。
毎年実施しているお客様アンケートにも、多くの回答や相談ニーズが集まります。今後は、それらをAIで分析し、ニーズの強いお客様から優先的にアプローチするなど、営業活動にもつなげていきたいですね。
営業面談やコンサルティング面談、採用面接の分析にも取り組みたいと考えています。成果を上げている人は、どのような順番で話し、どのような質問をし、お客様の反応を引き出しているのか。すべての録画を人が確認するのは現実的ではありませんが、AIでポイントを整理し、複数の面談を比較すれば、成果につながる要素を見つけられる可能性があります。
これまで個人の感覚にとどまっていた面談のノウハウを整理し、社員教育に生かす。そこまで進めば、AIは単なる業務効率化のツールではなく、組織全体のコンサルティング品質を高める基盤になると思います。
―――JAPAN AI:今後、AIと人の役割はどのように変わっていくと考えていますか。
――持木氏
AIは、専門家にとって敵にも味方にもなり得ると思います。一般の方でも、AIに税務の質問をすれば、一見正確に見える回答をすぐに得られるようになりました。その結果、「専門家に相談しなくてもよい」と思われる場面が増える可能性があります。そういう意味では、専門家にとって脅威になり得ます。
ただ、出てきた回答が本当に正しいのか、相談者の状況にそのまま当てはめてよいのかを判断するには、専門知識が必要です。AIはもっともらしい誤りを返すこともあるため、知識がなければ、回答を適切に検証し、使いこなすことはできません。
一方、専門家がAIを使えば、調査のスピードは格段に上がります。以前は時間をかけて探していた法令や条文も、どこに記載されているのかを短時間で見つけられるようになりました。一般の方がAIに答えを求めるのと、専門家がAIを使って回答を検証し、個別の状況に合わせて判断するのとでは、得られる成果が大きく異なります。
これから必要になるのは、AIを「優秀なアシスタント」として活用し、出てきた回答を専門家として判断し、適切にコントロールできる人材です。AIの活用に長けた若手社員と、業務上の課題やお客様への提供価値を理解している管理職が、それぞれの強みを持ち寄ることも重要でしょう。
私自身も、実現したい構想を考え、具体的なエージェントの作成はAIに詳しいメンバーに任せることがあります。役職や年齢にかかわらず、それぞれが得意な役割を担うことが、AI活用を進めるうえでは大切です。
資料作成や情報整理にかかる時間が減れば、コンサルタントは「何を問うべきか」「お客様にとって本当に必要なことは何か」を考える時間を増やせます。
ただ、その分、コンサルタントとしての本質的な力は、これまで以上に問われると思います。AIで資料を作れること自体が価値なのではありません。AIでは代替できない問いを立て、お客様の状況に合った提案へつなげることが重要です。
AIによって業務を効率化し、人は本質的な仕事に力を注ぐ。それが、コンサルティングの品質向上につながると考えています。変化の速いAIだからこそ、すべてを決めてから始めるのではなく、まずは試してみる。実際に使いながら、現場に合う形へ改善していく姿勢も必要だと思います。






