“使われないAI導入”を避けるために。伸栄商事が2カ月トライアルで築いた、全社AI活用の勝ち筋

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「セキュリティ」と同じくらい「使われない未来」が怖かった
“慣れる”と”業務に接続する”を分けて、トライアルで勝ち筋を掴んだ
「余白をつくる」から「守備範囲を広げる」AI活用へ

導入前の課題

  • 市場環境が厳しくなる中、競合との差が広がることへの危機感が強まり、「数年後を見据えてAIを使える組織に変わる必要がある」と感じていた
  • 部門ごとに手作業が多く、資料作成や集計、転記、確認など”時間が取られる業務”が積み上がり、思考や企画に割く余白が生まれにくかった
  • 全社的なDX基盤やデジタル習慣が強い状態ではなく、ITリテラシーの差も大きかったため、新しいやり方を浸透させる土台づくりが難しかった

導入後の成果

  • 部門横断22名の2カ月トライアルを起点に100名の全社展開に向けた土台づくりが進んだ
  • オリジナルエージェントが62個まで増加。効果管理シートで時間削減を可視化し、大幅な削減ができた
  • ロジスティック部のマニュアル作成エージェント(240分→60分、75%削減)や、営業事務の受注メールの自動振り分けなど、部署別ユースケースが生まれ、ロールモデルとAI活用への前向きな空気が立ち上がり始めた

【企業紹介】

  • 会社名:伸栄商事株式会社
  • 設立:1982年
  • 事業内容:全国の生活協同組合を主要取引先に、化粧品・健康食品・日用品雑貨の企画から製造(外部OEM)、販売までを担う卸商社
  • 従業員数:約100名
  • 利用プロダクト:JAPAN AI AGENTJAPAN AI CHATJAPAN AI SPEECH

生協向けに化粧品・健康食品・日用品雑貨を企画・販売する伸栄商事株式会社。エルベナソープなどの発売元として知られています。同社はBtoBの”黒子”として、長年積み上げてきた取引基盤を強みにする一方で、生成AIの普及によって「社員が個別に使い始める」フェーズに入ったことで、情報セキュリティと組織浸透の両面で会社として運用ルールを整備する必要に迫られていました。
こうした背景から、同社は生成AIを「会社として導入・運用する」検討に舵を切りました。次に向き合ったのは「定着」です。最大の懸念は、「導入したのに使われない」「全社に配っても2割しか使わない」といった状態に陥ることでした。だからこそ、ツール選定と同じくらい”浸透の設計”に時間をかけ、トライアルを起点に段階的な定着を狙いました。
通常の会社であれば、DXツールはシステム部門が所管することも多い中で、伸栄商事でAI導入推進を担ったのは「経営企画部」。会社全体のテーマを横断して扱う立場だからこそ、部署ごとの課題整理や合意形成までを含めて推進し、全社展開に向けた準備を進めてきました。本記事では、推進を担う経営企画部の岩本さん、藤田さん、山本さんに、JAPAN AI導入前の背景からトライアル設計、成果、今後の展望までを伺いました。

主力商品「エルベナ」

▶︎導入前の課題

「セキュリティ」と同じくらい「使われない未来」が怖かった

―――JAPAN AI:伸栄商事さんの事業の特徴と、AI導入前に社内で起きていた課題を教えてください。

――岩本氏
当社は化粧品・健康食品・日用雑貨を、全国の生活協同組合(生協)向けにオリジナル商品を展開しています。営業部門は顧客の新規獲得というよりも、長年築いてきたお客様との関係を基盤に、企画や提案によって新たな価値を積み重ねていく仕事が中心です。

生成AIについてはちょうど1年前から、社内でも生成AIを使い始める人が増えてきていました。私自身も2023年夏ごろから使い始めたのですが、業務で利活用するとなると情報漏洩のリスクもあり、どうしても利活用の幅は限定されていました。結果として、個々人が個別に生成AIを”簡易的に使う”状態が続いていました。

ただ、一定数が使い始めると、今度は会社として放置できない問題が出ます。ガイドラインがないまま業務情報を扱うリスクが顕在化しますし、情報セキュリティの観点でも手当てが必要になります。一方で、導入しても使われないケースを他社事例で数多く見ていました。「全社導入したが2割しか使わない」「結局うまくいったのか分からないまま終わる」。当社はDXツールがまだ充実しているわけではないため、DXリテラシーの高い他社でも失敗を経験しているのであれば、当社だと余計に失敗を再現する確率が高いと感じていました。

だからこそ課題は二つで、ひとつは”放置できないリスク”が出始めたこと。もうひとつは、”導入するのが目的”にしない浸透の最適解をどう創出するか、でした。背景にあったのは、焦燥感ですかね。競合他社がAIを利活用して事業基盤を強化し、マーケティングやクリエイティブのレベルを向上し始めている中で、このまま当社が何もしなければ、この先少しづつ小さな負けが積みあがっていくのではないかと。既存のお客様とのビジネスを大切にしているからこそ、その積み重ねが一番怖いなと感じていました。

―――JAPAN AI:その上で、JAPAN AIを選んだ決め手はどこにありましたか。

――岩本氏
ツール選定と同じくらい、浸透設計を重視しました。たとえば、ChatGPTなどの生成AIを導入し、AI研修会社に研修してもらって、あとの運用は自社で推進するとなると、費用も工数も膨らみやすい。しかも、どこまで利活用が進むのかが想定しづらい。推進側も現場もつまずきやすく、結果的に”導入して終わる”失敗に近づいてしまいます。

その点、JAPAN AIは2カ月のトライアルがあり、全社導入前に反応とつまずきを確認できる。加えて、研修や伴走の体制がプロダクトの運用設計の中に組み込める。さらに、当社は企画・制作・営業事務など職種が幅広いので、チャットの使いこなしだけではなく、業務の型を作れるエージェント機能があるほうが定着しやすいと考えました。検討期間が長かったのは、単に他社ツールと比較していたというよりも、「失敗しないAI導入」を頭の中で構想していた時間でしたね。

▶︎導入後の変化

“慣れる”と”業務に接続する”を分けて、トライアルで勝ち筋を掴んだ

―――JAPAN AI:2カ月トライアルは、どのように進めたのでしょうか。全社展開に向けて、最初に意識したポイントを教えてください。

――藤田氏
最初は「慣れてもらう」「アレルギー反応をなくす」を最優先にしました。トライアルメンバーは部門横断で22名です。各部署2〜3名を基本に、希望者と推薦者を混ぜています。全社導入後は部署内で推進役になってもらう前提も、最初から共有しました。

進め方は、オンライン研修を1回、オンサイト研修を計3回、そして週1回の相談会(オンライン)です。導入すると必ず「この業務に使っていいのか」「どこまでの情報なら投げていいのか」という疑問が出ます。ただ、ここで止まってしまう会社が多いので、トライアル中に部署ごとの線引きや論点を拾い上げ、全社展開前にガイドラインとして整える動きにつなげました。

KPIを置くよりも、「まず作ってみる」を優先したのもポイントです。最初は何につまずくかが分からなかったので、案内としては「一人一つはエージェントを完成させよう」と伝えました。結果的に、現時点でオリジナルエージェントは62個まで増えています。意欲の高いメンバーに、研修や相談会で”背中を押す機会”が入ると、一気に前に進む感覚がありましたね。

トライアル前には、活用事例がまとまった資料も見てもらいました。「こういう使い方があり得る」という像があるだけで、入口で止まりにくくなります。加えて、相談会やオンサイト研修を、部署をまたいだ”学習の場”にできたのも大きいです。他部署の質問を横で聞くだけで、「それができるのか!」と気づく。そこで出た論点を経営企画部に持ち帰って各部署にフォローする、という動きができたことで、現場の停滞を回収しやすくなりました。

―――JAPAN AI:実際使用してみてどのような効果が出ましたか?

――山本氏
エージェントごとに、導入前後の所要時間を管理するシートを作っていて、集計すると、これまで合計で約52時間かかっていた作業が、約12時間まで削減できました。約40時間の削減です。大きい例だと、マニュアル作成が240分から60分で75%削減し、営業で使用する「実績表」は、過去実績を一から作成する場合、480分かかっていたものが10分程度になっています。毎日やる作業ではなくても、年に数回の重い作業が軽くなると、部署としての負担が大きく変わります。

職種ならではの使い方も出ています。営業事務では、受発注メールを自動取得し、内容を整理したうえで受注メールを作成するエージェントが登場しています。また、FAXで届く確認書類をAIに読み込ませ、社内データと突合してチェックを行うエージェントもあります。精度はまだ8割程度と聞いていますが、まずは「確認作業の負荷を下げる」ことから活用が始まっています。

機能面では、文字起こしと議事録作成ができる「JAPAN AI SPEECH」はあって良かったです。オンライン会議では精度が高いですし、リアルタイムは課題があっても、まず動かしておけば後で使えます。今後は画像生成も、カタログ制作の現場で使う頻度が上がると思います。薬機法チェックなど、JAPAN AIが用意した公式エージェントを法務・品質領域でそのまま活用できている部署もあり、入口があることで”使える場面”を早く作れた感覚があります。

「余白をつくる」から「守備範囲を広げる」AI活用へ

―――JAPAN AI:今後、JAPAN AIをどう活用していきたいと考えていますか?

――藤田氏
まずは、単純作業に取られている時間を減らして「余白」をつくることが第一段階だと思っています。日々の業務は、作業が積み上がるほど思考の時間が削られていきます。そこで、調べる・まとめる・整えるといった作業ベースの負荷をAIに寄せ、商品企画であれば「商品の価値をどう作るか」、経営企画であれば「次にどこへ手を伸ばすか」といった、考える時間を取り戻す。まずはそこを狙っています。

次の段階では、当社がまだ知識を持ち切れていないカテゴリーや、これまで踏み込めていない領域に手を伸ばすときの”情報収集と構想づくり”で、AIの価値が大きくなると感じています。人がやると時間がかかる下調べや、論点整理、アプローチ案の叩き台づくりは、AIが一気に肩代わりできる部分がある。そこが加速すると、会社全体として生産性が上がり、結果として事業を拡大していく流れにもつながるはずです。AIを導入した価値は、効率化だけで終わらず、次の打ち手を増やせるかどうかにあると思っています。

――岩本氏
AIを使う前は「うちの会社でできることはこのくらいだろう」という守備範囲が、暗黙に決まってしまっていたように思うんです。もちろん経験に基づく判断として必要な側面もあるのですが、一方で、その”コンフォートゾーン”が広がりにくいのも事実です。

今はまだ「AIに慣れる」フェーズですが、AIを利活用することで何ができるのかがわかれば、業務効率化の先に、「今までできなかったこと」「やりたくてもあきらめていたこと」にもチャレンジできるようになる。仕事の幅を広げ、個人のDXスキルも伸びていく。そうしたポジティブな変化が、組織全体の活性化や、エンゲージメント向上、魅力的な職場づくりにもつながっていくはずだと信じています。だからこそ、ただツールとして導入するのではなく、その先には働き方改革につなげていきたい、というのがAI導入の先の大きな展望です。

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