「デジタル社会」という言葉をニュースや業務で見聞きする機会が増えています。しかし、デジタル社会とはそもそもどのような意味なのか、国は何を目指しているのか、具体的にどのような施策が進んでいるのかといった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、デジタル社会形成基本法に基づく定義から、デジタル庁が推進する重点計画・具体的な施策、そして課題や将来展望まで、2026年の最新情報を交えてJAPAN AIが網羅的に解説します。
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デジタル社会とは?
デジタル社会とは、デジタル社会形成基本法第2条において、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報又は知識を世界的規模で入手・共有・発信するとともに、AI・IoT・クラウドなどの先端技術を活用して大量の情報を適正かつ効果的に活用することで、あらゆる分野で創造的かつ活力ある発展が可能となる社会と定義されています。
簡単にいえば、インターネットやAI・IoTなどのデジタル技術を活用して、あらゆる分野で新しい価値を生み出し、国民一人ひとりが便利で豊かな暮らしを送れる社会のことです。
デジタル庁は、デジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を掲げています。単にアナログをデジタルに置き換えるのではなく、社会の仕組みそのものを変革し、国民の幸福な生活を実現することがデジタル社会の本質です。
デジタル社会を実現する目的
デジタル社会の形成は、以下の目的を達成するために推進されています。
- 国際競争力の強化:デジタル技術の活用で日本の産業競争力を高める
- 国民の利便性の向上:行政手続きのオンライン化や医療・教育のデジタル化により、国民生活を便利にする
- 少子高齢化への対応:人口減少・労働力不足をデジタル技術で補い、持続可能な社会を維持する
- 地域課題の解決:地方と都市の格差をデジタルの力で解消する
重要なのは、デジタル化そのものが目的ではなく、あくまで「国民の幸福な生活の実現」が最終的なゴールである点です。デジタル技術は、そのための手段として位置づけられています。
デジタル社会を実現した未来のイメージ
デジタル社会が実現した未来では、私たちの暮らしが大きく変わります。
- 医療:オンライン診療が普及し、電子カルテの全国的な共有により、どこにいても最適な医療を受けられる
- 教育:一人ひとりの理解度に合わせた個別最適化学習が実現し、地域や経済状況による教育格差が縮小する
- 行政:引っ越しや確定申告などの手続きがスマートフォンひとつで完結し、窓口に足を運ぶ必要がなくなる
- 防災:AIによるリアルタイムの災害予測と避難誘導が実現し、被害を最小限に抑えられる
こうした社会像は、政府が掲げる「Society 5.0」(サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた人間中心の社会)とも密接に関連しています。
デジタル社会のビジョンと理念
デジタル社会の実現にあたって、デジタル庁は明確なビジョンと理念を掲げています。これらは単なるスローガンではなく、すべての施策の判断基準となる指針です。
デジタル社会の理念:「誰一人取り残されない」
デジタル庁が掲げる「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」は、デジタル社会の中核的な理念です。
この理念は、デジタル技術の恩恵を高齢者・障がい者・外国人を含むすべての人が享受できる社会を目指すものです。具体的には、以下の取り組みが含まれます。
- デジタルデバイドの解消:年齢や地域、経済状況によるデジタル格差をなくす
- アクセシビリティの確保:誰もが使いやすいデジタルサービスの設計
- デジタルリテラシーの向上:デジタル技術を正しく理解し活用する力の底上げ
デジタル化が進むほど、取り残される人が生まれるリスクも高まります。だからこそ、「誰一人取り残されない」という理念を政策の根幹に据えることで、すべての国民がデジタル技術の恩恵を実感できる社会の実現につながります。
デジタル社会の基本原則
「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(2020年12月25日閣議決定)では、デジタル社会を形成するための10の基本原則が示されています。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| オープン・透明 | 情報やデータをオープンにし、透明性を確保する |
| 公平・倫理 | 公平性を保ち、倫理的な配慮を行う |
| 安全・安心 | サイバーセキュリティの確保と個人情報の保護 |
| 継続・安定・強靱 | 持続可能で安定した、災害にも強いシステムの構築 |
| 社会課題の解決 | デジタル技術で社会課題を解決する |
| 迅速・柔軟 | 社会の変化に迅速かつ柔軟に対応する |
| 包摂・多様性 | 多様な価値観を尊重し、すべての人を包摂する |
| 浸透 | デジタル技術を社会全体に浸透させる |
| 新たな価値の創造 | イノベーションにより新しい価値を生み出す |
| 飛躍・国際貢献 | 国際社会への貢献と日本のプレゼンス向上 |
これらの原則は、政府がデジタル社会に関する施策を策定する際の判断基準です。
出典:総務省「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針の概要」
デジタル社会形成基本法とは
デジタル社会形成基本法は、2021年(令和3年)9月に施行された法律で、デジタル社会の形成に関する基本理念や施策の方針を定めたものです。
それまでのIT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)に代わる法律として制定され、日本のデジタル政策の根幹を成しています。
デジタル社会形成基本法の特徴
デジタル社会形成基本法には、IT基本法にはなかった以下の特徴があります。
- 「デジタル社会」の定義規定(第2条):法律上初めて「デジタル社会」を明確に定義
- デジタル庁設置の根拠:デジタル社会形成の司令塔としてデジタル庁を設置する根拠を規定
- 国・自治体・事業者の責務:デジタル社会の形成に向けた各主体の責務を明確化
- 重点計画の策定義務:政府にデジタル社会の実現に向けた重点計画の策定を義務づけ
また、令和6年(2024年)には改正が行われ、ベース・レジストリ(公的基礎情報データベース)の整備やマイナンバー制度に関する規定が追加されています。
デジタル庁の役割
デジタル庁は、2021年9月に発足した、デジタル社会形成の司令塔です。内閣総理大臣を長とし、内閣に直接設置されている点が特徴です。
デジタル庁の主な役割は以下のとおりです。
- 重点計画の策定:デジタル社会の実現に向けた重点計画を毎年策定し、閣議決定
- マイナンバー制度の推進:マイナンバーカードの普及・利活用の促進
- ガバメントクラウドの整備:政府・自治体の情報システムを統合するクラウド基盤の構築
- デジタル規制改革:アナログ規制の見直しやデジタル完結の推進
- AI活用の推進:ガバメントAIの開発・提供による行政のAI活用促進
デジタル庁設置法に基づき、デジタル大臣には関係行政機関の長に対する勧告権があり、省庁横断的にデジタル化を推進できる体制が整えられています。
デジタル社会の実現に向けた重点計画
デジタル社会の実現に向けた重点計画は、デジタル社会形成基本法に基づいて政府が毎年策定する計画です。2025年6月13日に閣議決定された最新の重点計画では、以下の5つの柱が示されています。
- AI・デジタル技術等のテクノロジーの徹底活用による社会全体のデジタル化の推進:生成AIの活用環境整備、行政手続きのデジタル完結の推進
- AIフレンドリーな環境の整備:制度・データ・インフラの3面からAI活用を支える基盤づくり
- 競争・成長のための協調:データ連携・利活用の推進、準公共分野のデジタル化、自治体システムの標準化
- 安全・安心なデジタル社会の形成に向けた取組:デジタルリテラシーの向上、アクセシビリティの確保、サイバーセキュリティ対策
- 我が国のDX推進力の強化(デジタル人材の確保・育成と体制整備):デジタル人材の確保・育成、政府のDX推進体制の強化
2025年版の重点計画では、特に生成AIの活用が大きな柱として位置づけられました。人口減少・労働力不足という日本が直面する課題に対して、AI・デジタル技術の徹底活用で社会の維持・発展を図る方針が明確に打ち出されています。
デジタル社会の実現に向けた施策
重点計画に基づき、政府はさまざまな分野でデジタル社会の実現に向けた具体的な施策を展開しています。
準公共分野のデジタル化
準公共分野とは、医療や教育、防災、こどもの生活など、国民の暮らしに密接に関わる分野を指します。政府はこれらの分野でデジタル化を重点的に推進しています。
- 医療:電子カルテの標準化、オンライン診療の推進、全国医療情報プラットフォームの構築
- 教育:GIGAスクール構想による1人1台端末の活用、デジタル教科書の導入
- 防災:AIを活用した災害予測、防災情報のリアルタイム配信
- こども:こどもデータ連携による支援の充実
これらの取り組みにより、地域や経済状況に関わらず、すべての国民が質の高いサービスを受けられる社会の実現が期待されています。
サイバーセキュリティ等の安全・安心の確保
デジタル社会の進展に伴い、サイバー攻撃の脅威も増大しています。政府は、安全・安心なデジタル社会の実現に向けて、以下の対策を推進しています。
- サイバーセキュリティ戦略に基づく政府全体のセキュリティ強化
- 重要インフラのサイバーセキュリティ対策の徹底
- 偽・誤情報対策の推進
- 個人情報保護制度の適正な運用
デジタル社会において「安全・安心」は、国民がデジタルサービスを信頼して利用するための大前提です。セキュリティ対策の強化により、安心してデジタル技術を活用できる環境が整います。
デジタル人材の育成・確保
デジタル社会の実現には、デジタル技術を活用できる人材の育成が不可欠です。政府は「デジタル田園都市国家構想総合戦略」において、2026年度末までにデジタル推進人材を230万人育成する目標を掲げています。
育成の進捗は順調で、2022年度は目標約25万人に対して約33万人(達成率約132%)、2023年度は目標約35万人に対して約51万人(達成率約144%)を達成しています。
具体的な施策としては、以下が挙げられます。
- リスキリングの推進:社会人向けのデジタルスキル習得支援
- デジタルリテラシー教育:学校教育におけるプログラミング・データ活用教育の充実
- デジタル活用支援推進事業:高齢者等を対象としたスマートフォン教室の全国展開
デジタル人材の育成は、企業のDX推進だけでなく、地域社会全体のデジタル活用力を底上げするうえでも重要な施策です。
生成AIの行政活用(ガバメントAI)
2025年の重点計画改定で、AI活用が主要な柱のひとつに位置づけられました。その象徴が、デジタル庁が内製した生成AI基盤「ガバメントAI(源内)」です。
ガバメントAI「源内」は、政府全体のAI基盤として開発された生成AIの利用環境で、2026年5月から全府省庁の約18万人を対象とした大規模実証が段階的に開始されています。主な機能は以下のとおりです。
- 汎用機能:文章作成、要約、校正、翻訳
- 行政実務特化機能:法令検索アプリ、答弁作成支援アプリ
- オープンソース公開:ソースコードと構築手順が公開され、自治体も自前のクラウド環境で構築可能
ガバメントAIの整備により、行政手続きの自動化やデータ分析に基づく政策立案が加速すると期待されています。
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次期マイナンバーカードとマイナアプリ
マイナンバーカードの利便性向上に向けて、2つの大きな動きがあります。
マイナアプリ(2026年夏提供予定)
デジタル庁は、現在の「マイナポータルアプリ」に「デジタル認証アプリ」の機能を統合し、呼称を「マイナアプリ」に変更して2026年夏頃に提供予定です。主な機能は以下のとおりです。
- マイナンバーカードを使った本人確認・情報連携
- スマートフォンへのマイナンバーカード機能の追加(iPhone・Android対応)
- 行政機関からのプッシュ通知の受け取り
次期マイナンバーカード(2028年度導入予定)
当初2026年の導入が検討されていた次期マイナンバーカードは、関連システムの対応等を考慮し、2028年度中の導入に延期されました。次期カードでは、券面情報の変更やセキュリティの強化が予定されています。
デジタル社会の課題と問題点
デジタル社会の実現にはさまざまなメリットがある一方で、解決すべき課題も存在します。
デジタルデバイドと社会的不平等
デジタルデバイド(情報格差)は、デジタル社会における最も深刻な課題のひとつです。年齢・地域・経済状況によって、デジタル技術の恩恵を受けられる人と受けられない人の間に格差が生じています。
- 年齢による格差:高齢者はスマートフォンやインターネットの利用率が低く、行政サービスのデジタル化から取り残されるリスクがある
- 地域による格差:過疎地域ではブロードバンド環境が十分に整備されていない場合がある
- 経済的格差:デジタル機器の購入やインターネット接続にかかる費用が負担となるケースがある
政府は「誰一人取り残さない」理念のもと、総務省の「デジタル活用支援推進事業」を通じて、全国各地でスマートフォン教室やオンライン行政手続きの講習会を開催しています。自治体レベルでも、デジタル支援員の配置やアプリ活用講座の開催など、独自の取り組みが進んでいます。
セキュリティリスクとプライバシー問題
デジタル社会の進展に伴い、サイバー攻撃の質・量ともに脅威が増大しています。個人情報の漏洩やランサムウェアによる被害は年々深刻化しており、デジタル社会における信頼の確保は重要な課題です。
また、データの利活用が進むことで、個人のプライバシーが侵害されるリスクも高まります。利便性とプライバシーのバランスをどのように取るかは、デジタル社会の持続的な発展において避けて通れないテーマです。
デジタル社会の実現に向けた自治体の取り組み
デジタル社会の実現は、国だけでなく地方自治体の取り組みが不可欠です。現在、全国の自治体でデジタル化に向けたさまざまな施策が進められています。
自治体システムの標準化では、基幹業務システムの標準仕様への移行とガバメントクラウドへの移行が進行中です。これにより、自治体ごとのシステム仕様が標準化され、行政サービスの効率化とコスト削減が期待されています。
デジタル田園都市国家構想の実現
デジタル田園都市国家構想は、「デジタルの力を活用した地方の社会課題解決」を目指す政府の構想です。Well-Being(幸福)とSustainability(持続可能性)の実現を柱に、地方創生とデジタル実装を一体的に推進しています。
交付金制度を活用し、全国の自治体でデジタル技術を活用した地域課題の解決が進められています。テレワークの推進やスマート農業の導入、遠隔医療の実施など、地域の特性に応じた多様な取り組みが展開されています。
なお、デジタル推進人材230万人の育成目標(2026年度末)については、2022〜2023年度の実績が目標を上回るペースで推移しており、着実に進捗しています。
デジタル社会の未来と展望
デジタル社会は今後も進化を続けます。特に注目すべき動向として、以下が挙げられます。
AIの社会実装の加速
生成AIをはじめとするAI技術の急速な発展により、行政・産業・教育などあらゆる分野でAIの活用が進んでいます。ガバメントAIの整備に見られるように、政府自らがAI活用の先頭に立つ姿勢が明確です。
DFFT(信頼性のある自由なデータ流通)の推進
日本が提唱した「DFFT(Data Free Flow with Trust)」は、プライバシーやセキュリティを確保しつつ、国境を越えたデータの自由な流通を促進する国際的な枠組みです。G7やG20での合意を経て、具体的な制度設計が進んでいます。
持続可能な社会への貢献
デジタル技術は、エネルギー効率の向上や資源の最適配分を通じて、持続可能な社会の実現にも貢献します。人口減少社会においても、デジタル技術の活用により公共サービスの質を維持・向上させることが可能です。
デジタル社会に関してよくある質問
デジタル社会とデジタル化の違いはなんですか?
「デジタル社会」はデジタル技術が社会全体に浸透し、国民が多様な幸せを実現できる状態・ビジョンを指します。一方「デジタル化」は、その状態に至るための手段・プロセスです。デジタル化には、紙をデータに変換する「デジタイゼーション」、業務プロセスをデジタル化する「デジタライゼーション」、組織・社会全体を変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の段階があります。
デジタル社会で私たちの暮らしはどう変わりますか?
行政手続きのオンライン完結やオンライン診療の普及、個別最適化された教育、テレワークの定着など、日常生活のあらゆる場面で利便性が向上します。2026年夏にはマイナアプリの提供が予定されており、スマートフォンひとつで本人確認や行政手続きが完結する環境が整いつつあります。
デジタル社会についていけない場合はどうすればいいですか?
総務省の「デジタル活用支援推進事業」により、全国各地でスマートフォンの使い方やオンライン行政手続きの講習会が開催されています。多くの自治体でも独自のスマホ教室やデジタル支援員の配置を行っており、無料で参加できます。「誰一人取り残さない」の理念のもと、支援体制は年々充実していますので、まずはお住まいの自治体の窓口に相談してみましょう。
デジタル社会の実現に向けて私たちができること
ここまで解説してきたとおり、デジタル社会とは、デジタル技術の活用によってあらゆる分野で創造的かつ活力ある発展が可能となる社会です。デジタル社会形成基本法に基づき、デジタル庁を司令塔として重点計画が毎年策定され、準公共分野のデジタル化やガバメントAIの整備、マイナンバーカードの利活用促進など、具体的な施策が着実に進んでいます。
一方で、デジタルデバイドの解消やセキュリティの確保など、解決すべき課題も残されています。
デジタル社会の実現は、政府や自治体だけの取り組みではありません。私たち一人ひとりが以下のアクションを意識することが大切です。
- デジタルリテラシーを高める:スマートフォンやオンラインサービスの基本的な使い方を身につける
- 最新情報をキャッチアップする:デジタル庁の重点計画や新しいサービスの動向に関心を持つ
- 身近な人をサポートする:デジタル機器に不慣れな家族や同僚に使い方を教える
- セキュリティ意識を持つ:パスワード管理やフィッシング詐欺への注意を怠らない
デジタル社会は、すべての人がデジタル技術の恩恵を受けられる「誰一人取り残されない」社会を目指しています。その実現に向けて、まずは自分自身のデジタルスキルを一歩ずつ高めていくことから始めてみてはいかがでしょうか。


