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スマートシティとは?定義・メリット・課題・最新事例

スマートシティ とは

ニュースや会議で「スマートシティ」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、「具体的に何を指すのか」「従来のまちづくりと何が違うのか」を正確に説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。

スマートシティとは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用して都市や地域の課題を解決し、住民の生活の質を高める取り組みのことです。少子高齢化やインフラ老朽化といった社会課題が深刻化するなか、日本政府も積極的に推進しており、2026年3月にはリファレンスアーキテクチャ第5版が公表されるなど、政策面でも大きな動きが続いています。

本記事では、スマートシティの定義やメリット・課題から、実現に必要な技術、国内外の最新事例までをわかりやすく解説します。

スマートシティとは?

スマートシティとは、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ICTなどの先端技術を活用し、都市や地域が抱えるさまざまな課題を解決しながら、住民にとってより快適で便利な暮らしを実現する取り組みです。

単に最新技術を導入するだけではなく、交通・エネルギー・医療・行政サービスなど複数の分野を横断的にデータで連携させ、都市全体を最適化する点が大きな特徴です。従来のまちづくりが道路や建物といったハード整備を重視してきたのに対し、スマートシティでは、これにデータとテクノロジーの活用を組み合わせて都市機能を高度化します。

スマートシティの定義

内閣府はスマートシティを以下のように定義しています。

グローバルな諸課題や都市や地域の抱えるローカルな諸課題の解決、また新たな価値の創出を目指して、ICT等の新技術や官民各種のデータを有効に活用した各種分野におけるマネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、社会、経済、環境の側面から、現在および将来にわたって、人々(住民、企業、訪問者)により良いサービスや生活の質を提供する都市または地域

出典:内閣府「Society 5.0 スマートシティ」

この定義のポイントは3つあります。第一に、ICTやAIなどの新技術の活用が前提であること。第二に、行政だけでなく官民が連携してデータを活用すること。そして第三に、社会・経済・環境の3つの側面からバランスよく都市の質を高めることです。

スマートシティは特定の技術やサービスを指す言葉ではなく、テクノロジーを活用した持続可能なまちづくりの包括的な概念として理解するのがよいでしょう。

スーパーシティとの違い

スマートシティと混同されやすい概念に「スーパーシティ」があります。両者は密接に関連していますが、アプローチに明確な違いがあります。

スマートシティは、交通・エネルギー・医療といった複数分野にまたがって技術やデータを活用し、都市機能を改善していく取り組みです。既存の都市基盤をベースに、デジタル化を進めていきます。

一方のスーパーシティは、複数分野を横断的に統合し、「まるごと未来都市」として一体的に設計する構想です。2020年に改正された国家戦略特区法に基づき、規制改革と先端技術の実装を同時に進める点が特徴です。自治体・企業・住民が一体となり、大胆な規制緩和のもとで生活全般のデジタル化を一気に実現することを目指しています。

簡潔にまとめると、スマートシティが都市課題の解決に向けた幅広い取り組みであるのに対し、スーパーシティは規制改革と一体で「包括的な未来都市の設計」を進める制度的構想であるという違いがあります。

スマートシティが注目される背景

スマートシティが世界的に注目を集めている背景には、都市が直面する課題の深刻化と、それを解決しうるデジタル技術の急速な進歩があります。

世界の都市人口は増加の一途をたどっており、国連の推計(2018年改訂版)では2050年までに世界人口の約68%が都市部に集中するとされています。なお、より最近の国連発信では約70%との見通しも示されています。人口集中に伴い、交通渋滞、大気汚染、エネルギー消費の増大、住宅不足といった都市課題がますます深刻化しています。

日本においても、少子高齢化による労働力不足、地方の過疎化、インフラの老朽化、自然災害リスクの増大など、従来のまちづくり手法だけでは対応が困難な課題が山積しています。こうした状況下で、AIやIoTなどのデジタル技術を活用して都市機能を効率化・高度化するスマートシティへの期待が高まっているのです。

出典:United Nations「World Urbanization Prospects」

スマートシティの必要性

スマートシティが必要とされる理由を、具体的な社会課題の観点から整理します。

人口構造の変化:日本では少子高齢化が急速に進行しており、2024年10月時点で65歳以上の高齢者が人口の29.3%を占めています。高齢者の移動支援、遠隔医療、見守りサービスなど、テクノロジーを活用した新たな社会基盤が不可欠です。

インフラの老朽化:高度経済成長期に整備された道路・橋梁・上下水道などのインフラが一斉に更新時期を迎えています。IoTセンサーによる常時監視やAIによる劣化予測など、スマートシティの技術がインフラ維持管理の効率化に貢献します。

カーボンニュートラルへの要請:2050年カーボンニュートラルの実現に向け、都市のエネルギー消費を最適化する必要があります。スマートグリッドや再生可能エネルギーの効率的な配分は、スマートシティの重要な構成要素です。

自然災害リスクへの対応:地震・台風・豪雨などの自然災害が頻発する日本では、リアルタイムのデータ収集と分析に基づく防災・減災の仕組みが求められています。

出典:内閣府「令和7年版高齢社会白書」

スマートシティの実現によるメリット

スマートシティが実現すると、住民・自治体・企業のそれぞれにさまざまなメリットがもたらされます。スマートシティが実現することによる代表的な4つのメリットを紹介します。

生活の質(QOL)が向上する

スマートシティの最も大きなメリットは、住民の生活の質(QOL)が向上することです。

行政手続きのオンライン化により、窓口に出向くことなく各種申請が完了します。遠隔医療の普及により、高齢者や過疎地域の住民も専門医の診察を受けやすくなります。AIを活用した教育プログラムでは、一人ひとりの学習進度に合わせた最適な教育が提供されます。

また、生活に密着したサービスとして、AIによるゴミ収集ルートの最適化、スマートメーターによる水道・電気の効率的な管理、地域の混雑状況のリアルタイム配信なども実現します。これらのサービスが統合されることで、日常生活のあらゆる場面で利便性が高まるのです。

災害対策の強化

日本は地震・台風・豪雨などの自然災害が多い国であり、防災・減災はスマートシティの重要なテーマです。

IoTセンサーを河川や斜面に設置することで、水位の上昇や土砂崩れの兆候をリアルタイムで監視できます。AIがこれらのデータを分析し、災害発生を事前に予測することで、早期の避難指示や住民への警報発信が可能です。

さらに、災害発生時にはAIが最適な避難ルートを算出し、デジタルサイネージやスマートフォンを通じて住民に案内します。避難所の混雑状況もリアルタイムで共有されるため、分散避難が促進され、二次被害のリスクを低減できます。

交通渋滞の緩和

都市部の慢性的な交通渋滞は、経済損失や環境負荷の大きな要因です。スマートシティでは、AIやIoTを活用した複数のアプローチで交通課題の解決を図ります。

AI信号制御では、交通量をリアルタイムで分析し、信号の切り替えタイミングを最適化します。これにより、特定の交差点に車両が集中する事態を防ぎ、渋滞を緩和します。

MaaS(Mobility as a Service)は、電車・バス・タクシー・シェアサイクルなどの移動手段を一つのサービスとして統合する仕組みです。利用者はスマートフォン一つで最適な移動ルートを検索し、予約・決済までをシームレスに行えます。

さらに、自動運転バスの導入も各地で実証実験が進んでおり、ドライバー不足が深刻な地方部での公共交通の維持に貢献することが期待されています。

エネルギー効率の向上

スマートシティでは、エネルギーの生産・配分・消費をデータで最適化し、都市全体のエネルギー効率を大幅に向上させます。

スマートグリッドは、電力の需給バランスをリアルタイムで調整する次世代送電網です。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは天候によって発電量が変動しますが、スマートグリッドがAIで需給を予測・制御することで、安定した電力供給を実現します。

HEMS(Home Energy Management System)は、家庭内のエネルギー消費を可視化・制御するシステムです。電力使用量をリアルタイムで把握し、AIが最適な節電提案を行うことで、家庭レベルでのエネルギー効率化を実現します。

スマートシティの実現に向けた課題

スマートシティには多くのメリットがある一方で、実現に向けてはいくつかの課題を克服する必要があります。技術面・制度面・社会面の3つの軸から主要な課題を整理します。

地域住民との合意形成が難しい

スマートシティの推進において最も根本的な課題の一つが、地域住民との合意形成の難しさです。

スマートシティの恩恵は「都市全体の最適化」という抽象的な形で現れることが多く、個々の住民にとっての具体的なメリットが伝わりにくいという問題があります。特に高齢者を中心に、デジタル技術への抵抗感や、生活環境の変化に対する不安を感じる住民も少なくありません。

この課題を解決するためには、住民参加型のまちづくりプロセスを設計し、計画段階から住民の声を反映させることが重要です。具体的な生活改善の事例をわかりやすく示し、住民一人ひとりがスマートシティの当事者として関われる仕組みを構築しましょう。

プライバシー上の懸念

スマートシティでは、街中に設置されたカメラやセンサーが大量のデータを収集します。このデータには人の移動履歴や行動パターンなど、個人のプライバシーに関わる情報が含まれる可能性があります。

データの収集・利活用と個人情報保護のバランスをどう取るかは、スマートシティにおける最重要課題の一つです。住民が安心してサービスを利用できるよう、データの収集目的・利用範囲・管理体制を明確にしたデータガバナンスの仕組みを整備することが不可欠です。

先進事例では、住民が自らのデータの共有範囲を選択できるオプトイン方式を採用するケースもあります。

導入コストが高い

スマートシティの実現には、通信インフラの整備、IoTセンサーの設置、データ連携基盤の構築、各種アプリケーションの開発など、多額の初期投資が必要です。加えて、システムの維持管理・更新にも継続的なコストが発生します。

特に財政基盤が脆弱な中小規模の自治体にとって、この導入コストは大きなハードルです。国の補助金制度(令和8年度スマートシティ実装化支援事業では、都市サービス実装タイプで1件あたり最大3,500万円、戦略的スマートシティ実装タイプで最大5,000万円の補助)を活用するほか、官民連携による費用分担、段階的な導入計画の策定など、持続可能な投資モデルの構築が求められます。

出典:国土交通省「令和8年度スマートシティ実装化支援事業の公募」

セキュリティの問題

都市のあらゆるインフラがネットワークでつながるスマートシティでは、サイバー攻撃のリスクが従来の都市よりも格段に高まります。

交通信号システムや電力供給システムがサイバー攻撃を受けた場合、都市機能が広範囲にわたって麻痺する恐れがあります。また、IoT機器はパソコンやスマートフォンに比べてセキュリティ対策が不十分なケースも多く、攻撃の入り口になりやすいという課題があります。

スマートシティの安全性を確保するためには、設計段階からセキュリティを組み込む「セキュリティ・バイ・デザイン」の考え方を徹底するとともに、インシデント発生時の対応体制を事前に整備しておくことが重要です。

スマートシティを実現するための技術

スマートシティの基盤となる中核技術を体系的に解説します。これらの技術が連携することで、都市全体のデータ駆動型マネジメントが可能です。

AIやIoTなどの先端技術

スマートシティの中核を担うのが、AI(人工知能)とIoT(Internet of Things)です。

AIは、都市から収集される膨大なデータを分析し、パターンの発見や将来予測を行います。具体的には、交通量の予測に基づく信号制御、カメラ映像からの異常検知、エネルギー需給の最適化など、幅広い分野で活用されています。

IoTは、あらゆるモノをインターネットに接続し、データの収集・送信を可能にする技術です。街中の温度・湿度・騒音・大気質などの環境データ、交通量、人流データなどをリアルタイムで収集し、AIの分析基盤に送ります。

AIとIoTは単独でも有用ですが、IoTが収集したデータをAIが分析するという相互補完的な関係で機能することで、スマートシティの真価が発揮されます。

センシング技術

センシング技術は、都市の「いま」をデータとして捉えるための技術群です。スマートシティの「目」と「耳」にあたる役割を果たします。

環境センサーは、気温・湿度・降水量・PM2.5濃度などの環境データをリアルタイムで計測します。カメラは、画像認識AIと組み合わせることで、交通量の計測、不審者の検知、災害状況の把握などに活用されます。LiDAR(ライダー)は、レーザー光を用いて周囲の3次元形状を高精度に計測する技術で、自動運転や地形変動の監視に不可欠です。

これらのセンシング技術が都市のあらゆる場所に配置されることで、都市の状態をリアルタイムに「見える化」し、データに基づいた意思決定が可能です。

データ連携基盤(都市OS)

スマートシティにおいて、異なる分野のデータを横断的に連携させる基盤が都市OS(データ連携基盤)です。

都市OSとは、交通・エネルギー・防災・医療など、分野ごとに独立して運用されているデータやシステムを相互に接続し、分野横断的なデータ活用を可能にするプラットフォームです。

2026年3月に内閣府が公表したスマートシティリファレンスアーキテクチャ第5版(SCRA5.0)では、都市OSの設計に特に重点が置かれています。SCRA5.0では「都市状態」という概念が導入され、交通・産業・環境などの分野ごとの状況をデータとして統合的に把握・分析できる構造が示されました。最上位目的として「人間中心で包摂的な社会の実現」が明確に位置づけられている点も注目されます。

代表的な都市OS基盤としては、欧州発のオープンソースソフトウェアFIWARE(ファイウェア)があり、日本ではNECが開発に参画し、高松市をはじめとする複数の自治体に導入されています。

ネットワーク技術

スマートシティでは、膨大な数のIoT機器が常時データを送受信するため、高速・大容量・低遅延の通信ネットワークが不可欠です。

5G(第5世代移動通信システム)は、従来の4Gに比べて最大約20倍の通信速度、約10分の1の低遅延を実現する通信規格です。4K/8K映像のリアルタイム伝送や自動運転の遠隔制御など、大容量・低遅延が求められるスマートシティのユースケースに対応します。

LPWA(Low Power Wide Area)は、低消費電力で広範囲をカバーする通信技術です。電池駆動で数年間稼働できるため、河川の水位計や農地の土壌センサーなど、電源確保が難しい場所に設置するIoT機器の通信に適しています。

5GとLPWAは競合する技術ではなく、用途に応じて使い分けることで、スマートシティのデータ流通基盤を効率的に構築できます。

スマートシティの取り組み事例【国内】

日本国内では、政府の支援のもと各地でスマートシティの取り組みが進んでいます。ここでは代表的な3つの事例を紹介します。

福島県会津若松市「スマートシティ会津若松」

会津若松市は、日本のスマートシティの先駆的事例として知られています。2011年の東日本大震災を契機に会津大学・アクセンチュアとの復興協定を締結してスマートシティの取り組みを開始し、2013年には施政方針に「スマートシティ会津若松」を掲げました。都市OSを活用したデータ駆動型のまちづくりを推進しています。

最大の特徴は、市民のデータをオプトイン方式で活用している点です。住民が自らの意思でデータ提供に同意する仕組みを採用しています。

具体的なサービスとしては、市民向けポータルサイト「会津若松+(プラス)」を通じた行政情報の一元提供、除雪車の位置情報のリアルタイム配信、デジタル母子健康手帳などがあります。2026年7月時点でも地域課題解決型のサービス実装を継続しており、デジタル行政サービスのモデルケースです。

出典:一般社団法人AiCTコンソーシアム

北海道札幌市「DATA-SMART CITY SAPPORO」

札幌市は、2017年策定の「札幌市ICT活用戦略」に基づき、2018年1月に官民データ活用プラットフォーム「DATA-SMART CITY SAPPORO」を開設し、オープンデータを軸としたスマートシティを推進しています。

このプラットフォームでは、行政が保有する各種統計データや施設情報に加え、民間企業のデータも集約・公開しています。市民や企業がこれらのデータを自由に活用してサービスやアプリケーションを開発できる環境を整備することで、データに基づくイノベーションの創出を目指しています。

2025年3月には「第2次ICT活用戦略」を策定し、人流センサー等を活用したまちづくりDXの方向性を示す8年間の計画を打ち出しました。官民データの協調利用をさらに推進し、市民サービスの高度化に取り組んでいます。

出典:札幌市「DATA-SMART CITY SAPPORO」

静岡県裾野市「Woven City」

トヨタ自動車が静岡県裾野市の東富士工場跡地に建設を進めるWoven City(ウーブン・シティ)は、モビリティの実証都市として世界的に注目されています。

2021年に着工し、2024年10月にPhase1の建築が完了。2025年秋にオフィシャルローンチを迎え、2026年4月時点では約100名規模の居住者による実証フェーズに入っています。

Woven Cityでは、自動運転・ロボット・AI・スマートホーム・エネルギーマネジメントなどの先端技術を統合的に実証しています。2026年4月に公開された「KAKEZAN 2026」では、VLMベースのマルチモーダルAI「Woven City AI Vision Engine」による危険予測、電動車(bZ4X)50台規模の仮想発電所(VPP)実証、デジタルツインを活用したゴミ収集ルートの最適化など、複数の技術プラットフォームが発表されました。

Woven City AI Vision EngineはすでにAWS Marketplaceで販売が開始されるなど、実証から実用化への移行も進んでいます。

出典:トヨタ自動車「KAKEZAN 2026」

スマートシティの取り組み事例【海外】

海外では、国家レベルでスマートシティ戦略を推進する事例や、特定の都市課題に特化した先進的な取り組みが数多く存在します。

シンガポール「Smart Nation」

シンガポールは、2014年に国家戦略として「Smart Nation構想」を発表し、国全体をスマートシティとして変革する取り組みを進めています。2025年のIMD Smart City Indexでは世界第9位にランクインしています。

主な施策として、国民デジタル認証(NDI)システムの導入、キャッシュレス社会に向けた電子決済(E-Payment)の普及、全国規模のセンサーネットワークの構築などがあります。行政手続きの大部分がオンラインで完結する電子政府の実現度は世界トップクラスです。

2024年10月には「Smart Nation 2.0」を発表し、第2段階に移行しました。信頼(Trust)、成長(Growth)、コミュニティ(Community)という3つの柱を掲げ、テクノロジーの社会実装をさらに加速させています。

出典:Smart Nation Singapore「Goals of Smart Nation 2.0」

中国・杭州「ETシティブレイン」

中国・杭州市では、アリババグループが開発したAI都市管理システム「ETシティブレイン(城市大脳)」が稼働しています。

このシステムは、市内に設置された4,000台を超えるカメラと2,000〜3,000台のサーバーを用いて、道路のライブ映像をAIでリアルタイムに分析します。交通量に応じて信号の切り替えタイミングを自動で最適化し、救急車などの緊急車両に対しては優先的に青信号を確保する機能も備えています。

導入の結果、杭州市中央部では交通渋滞が大幅に改善し、救急車の到着時間も短縮されたと報告されています。ETシティブレインは杭州市から他の中国都市、さらにはマレーシア・クアラルンプールなど海外にも展開が進んでいます。

スペイン・バルセロナ

バルセロナは、欧州を代表するスマートシティとして知られ、市民生活に密着したIoT活用で成果を上げています。

街灯にセンサーを搭載し、人の通行量に応じて明るさを自動調整するスマート街灯は、電力消費の削減に貢献しています。ゴミ収集では、コンテナにセンサーを設置してゴミの蓄積量を検知し、満杯になったコンテナのみを効率的に回収するシステムを導入。駐車場管理では、空き状況をリアルタイムで配信し、ドライバーが空きスペースを探して走り回る時間を削減しています。

バルセロナでは毎年11月に世界最大級のスマートシティイベント「Smart City Expo World Congress(SCEWC)」が開催されており、2026年も11月3〜5日に開催が予定されています。世界120か国から2万人以上のリーダーが集結し、最新のスマートシティ技術やソリューションが発表される場です。

スマートシティに関してよくある質問

スマートシティは私たちの生活をどう変えるのですか?

スマートシティが実現すると、日常生活のあらゆる場面で変化が起こります。たとえば、自動運転バスやMaaSにより通勤・通学の移動がスムーズになり、遠隔医療で自宅から専門医の診察を受けられるようになります。行政手続きはスマートフォンで完結し、窓口に並ぶ必要がなくなります。AIが個人の生活パターンを学習し、エネルギー消費の最適化や防災情報のパーソナライズ配信なども実現します。

日本のスマートシティはどこまで進んでいますか?

2026年時点で、日本のスマートシティは「実証から実装への移行期」にあります。内閣府は2026年3月にリファレンスアーキテクチャ第5版(SCRA5.0)を公表し、都市OSの設計指針を大幅に更新しました。令和8年度のスマートシティ実装化支援事業では全国9地区が選定され、内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省が連携して実装を支援しています。会津若松市やWoven Cityなど先行事例では具体的な成果が出始めていますが、全国的な普及にはまだ時間を要する段階です。

出典:国土交通省「令和8年度スマートシティ実装化支援事業の選定」

スマートシティとスーパーシティは何が違うのですか?

スマートシティは複数分野にまたがって技術やデータを活用し、都市課題を解決していく取り組みであるのに対し、スーパーシティは複数分野を横断的に統合し、規制改革と一体で「まるごと未来都市」を実現する構想です。スーパーシティは国家戦略特区法に基づく制度的な裏付けがある点も異なります。

スマートシティが描く持続可能な都市の未来

本記事では、スマートシティの定義から、注目される背景、メリット・課題、実現に必要な技術、そして国内外の最新事例までを解説しました。

スマートシティとは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用して都市の課題を解決し、住民の生活の質を高める包括的な取り組みです。交通渋滞の緩和やエネルギー効率の向上、災害対策の強化など、その恩恵は多岐にわたります。一方で、住民との合意形成、プライバシーの保護、導入コストの確保、セキュリティ対策といった課題も残されています。

日本では2026年3月のリファレンスアーキテクチャ第5版の公表や、令和8年度の実装化支援事業の推進など、政策面での後押しが強化されています。会津若松市のデータ駆動型行政、Woven Cityのモビリティの実証都市としての挑戦、シンガポールのSmart Nation 2.0など、国内外の先進事例は着実に成果を積み重ねています。

スマートシティは一朝一夕に実現するものではありません。しかし、テクノロジーの進化と社会課題の深刻化が交差する今、持続可能な都市づくりに向けた歩みは確実に加速しています。自治体の担当者であれば政府の支援制度や先行事例を参考に自地域での導入を検討し、企業の担当者であれば自社の技術やサービスがスマートシティのどの領域で貢献できるかを見極めてください。