「やらない選択肢はない」 リプロライフがJAPAN AI導入で挑んだ、属人化の解消と製品開発への集中
- メーカー

導入前の課題
- 製品開発に集中できないほど多くの定型業務
- 属人化による非効率と情報管理の煩雑化
- 社員ごとのAI活用格差と個人利用に伴うセキュリティリスク
導入後の成果
- 契約書作成が「1日 → 20分」に短縮するなど定型業務を大幅に効率化
- 文書作成や翻訳の精度向上により国際業務や社内コミュニケーションが円滑化
- 属人化を解消し、誰もが安心してAIを活用できる職場文化を情勢
【企業紹介】
- 会社名:株式会社リプロライフ
- 資本金:1,000万円
- 事業内容:医療機器製造販売業
- 従業員数:54人
株式会社リプロライフは、生殖医療分野における卵子・胚の凍結保存製品を開発・製造する医療機器メーカーです。ニッチかつ高い専門性を持つ領域で、製品開発を通じて生殖医療の進展に貢献してきました。
しかし、製品開発業務に集中すべき人材が事務作業や報告書作成に時間を取られ、本来の価値創出に十分なリソースを投下できないという課題が顕在化していました。さらに、一部社員による個人利用の生成AIは情報漏洩リスクをともない、安心して全社的に活用できる環境にはなっていませんでした。
この課題に対応するため、同社はJAPAN AIの導入を決断しました。経営メンバー直轄で進められたプロジェクトがどのように社内の意識と働き方を変えたのか、代表取締役社長の澁井史昭さん、情報システム部の安室史さんに伺いました。

▶︎導入前の課題
製品開発に集中できない…多くの定型業務が生んだ“見えないコスト”
➖➖➖JAPAN AI:日常の業務体制や働き方の中で、どのような課題や行き詰まりを感じていましたか。
――澁井氏
私たちは自社で工場を持たないファブレスメーカーであり、最も重要な仕事は製品開発です。本来ならリソースの8割を製品開発に注ぐべきなのに、実際は定型的な事務作業に時間を取られていました。社員も『誰がやっても構わない業務』に時間と労力を割かれ、本当に集中すべき領域への投資が後回しになっていたのです。
さらに、業務の属人化も深刻でした。計算や入力といった単純作業でも、やり方が人に依存してしまう。『この人しか分からない』『いないと回らない』という状態が随所にありました。医療機器メーカーでは技術文書や申請資料が膨大で、年々増加していました。戸棚がいっぱいになるほど紙の資料が積み上がり、データ化しても“どこに何があるのか”を把握しづらい状況でした。結局、必要な情報を探すこと自体に多くの時間を取られていました。こうした状況は、製品開発に人材を集中すべき我々にとって、大きな課題でした。
AIに関しては一部の社員が個人で使う一方、多くの社員は未経験のまま。これが社内の活用格差を広げ、セキュリティリスクも顕在化しました。私たちのように競合が限られる業界では、情報が外部に漏れると容易に特定されてしまうリスクがありました。だからこそ『本当に安全なのか』という不安が常にありました。

導入の決め手は“安全、簡単、納得の価格”
3年ほど前から、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入しており、その経験から自動化・効率化は常に取り組むべきテーマだと考えていました。その延長線上でここ数年で発展してきた複数のAIサービスを比較しましたが、評価のポイントは明確でした。
第一にセキュリティです。新製品情報が学習されてしまえば、競合が少ない業界ゆえに研究内容が簡単に特定されてしまいます。これは最優先で避けるべきリスクでした。国内での運用体制や、こちらのセキュリティ要件に合わせた柔軟なカスタマイズ対応が可能だったことも安心材料となりました。
次に使いやすさ。初心者でも直感的に扱えるUIでなければ、社内の活用格差は広がる一方です。その点、JAPAN AIは操作がわかりやすく、社員がすぐに業務で利用できる手応えがありました。
さらに価格の妥当性も決め手の一つでした。高すぎれば負担になりますし、安すぎれば逆に不安になります。JAPAN AIは“この成果なら十分に回収できる”と納得できる水準で、私自身の契約書作成が1日から20分へと短縮された例は、投資効果を示す良い事例です。
最終的に他社のAIツールも候補には挙がりましたが、こうした観点すべてでバランスが取れていたのがJAPAN AIでした。

発展を見越して“先に慣れる”戦略
AI導入は私と人事総務部の安室の二人部署のプロジェクトとして進めました。展示会でカタログを集め、その後、比較サイトやSNSでも情報を収集。いくつかのサービスを検討しましたが、最終的にトライアルまで進めたのはJAPAN AIだけでした。
私自身、RPA導入などの経験から『自動化は避けて通れない』という確信を持っていましたし、AIについても同じだと感じていました。今後、ビジネスの在り方が大きく変わっていくことは避けられないでしょう。だからこそ、本格的に発展してから慌てて取り組んでも対応が遅れてしまいます。今のうちに社内で慣れ、使いこなすベースを作っておかなければ、将来の競争力維持が難しくなる。その意味で『今から取り組むべきだ』という結論に至りました。
▶︎導入後の変化
9割の社員が日常的に活用!効率化から業務拡大へと広がるAI効果
➖➖➖JAPAN AI:“数字に表れる成果”と“現場の実感”の両面で、導入効果をどう感じていますか?
――安室氏
導入後、成果はすぐに数字として表れました。契約書作成は「1日 → 20分」に短縮し、長時間を要していた作業が大幅に効率化されました。メールの下書きや翻訳でもAIが下地を作るため、社員は加筆修正やニュアンス調整に集中できます。取引先から「違和感のない英文だ」と評価されるケースも増え、国際的なやり取りがスムーズになりました。
効率化の効果はもちろんですが、それ以上に大きいのは「できる業務量」が増えたことです。AIを積極的に使っている社員は、新しいタスクを任された際も対応できる範囲が広がり、結果としてチーム全体で担える業務が増えました。私自身も「AIを通したドラフトなら自信を持って出せる」と感じる場面が増え、質の高い成果物をより早く届けられるようになっています。
実際、今では社員の約90%が日常的にJAPAN AIを活用しています。定期的な勉強会を通じて事例を共有したことで、「自分も使ってみよう」という雰囲気が社内に広がりました。導入前は不安を口にしていた社員も、今では「相談相手になる」「時には部下のように指示できる」とAIを身近な存在として捉えています。
業務量はむしろ増えた部分もありますが、それは“こなせるタスクの総量が広がった”という意味であり、ビジネスに貢献できる領域が大きく増えたと実感しています。今後慣れが進めば、AI活用の可能性はさらに広がっていくと考えています。

※現地パートナーから受領したPDF形式の英語メールを読み込み、日本語へ翻訳・要約し、対応すべきアクションを整理している作業の様子。
「働くAIエージェント」で現場業務を自動化へ
最近は、物流管理の部署でAIエージェントの作成を行っています。委託している倉庫から送られてくるのは、いまだに紙ベースの資料です。担当者はそれを見ながら手入力し、別の資料と突き合わせて、最終的にパッキングリストを作成する。やること自体は難しくないのですが、どうしても工数が多く、1日1〜2時間を費やしていました。
そこで、このプロセスをAIエージェントに任せ、自動的に紙をデータ化してリストを生成する仕組みを構築しています。こうした「単純だが負担の大きい業務」を切り出すことで、社員はより付加価値の高い仕事に時間を割けるようになります。日頃からJAPAN AIのカスタマーサクセスの担当者さんと会話しながら、この仕組みを構築しています。
各国認証の課題をAIで体系化し、商品投入を「2年→半年」へ
➖➖➖JAPAN AI:現在の活用範囲や今後の展望でお考えのことはありますか?
――澁井氏
いまは契約書やメール作成にとどまらず、技術文書の体系化や各国の認証管理のような、業界特有で膨大な情報整理にも踏み込んでいます。私たちは現在、世界69ヶ国に製品を展開していますが、認証は国ごとに要件が違う。共通部分もある一方で、基本的にはバラバラで、正直、すべてを人力で把握するのは非常に困難な仕事です。現地代理店に確認しても、相手もメーカーではないので情報が曖昧なこともある。だからこそ、対応を即座に教えてくれるAI主導の仕組みをつくりたいと考えています。
AIに完璧な答えを求めているわけではありません。まずは信頼できる一次の回答を素早く提示してくれれば、担当者はそこから検証と判断に集中できる。いまは新商品の市場投入に、製品開発・申請作業を含め、長い時間を要していますが、これをできるだけ短縮するのが目標です。これが実現できれば、事業の成長が大きく加速します。スピードこそ競争力だと考えています。
最終的なゴールは属人化の解消です。これまで培ったノウハウをAIで客観化・標準化し、誰でも同じ水準で仕事が回せる体制にする。意思決定は人間が行いますが、意思決定に至るプロセスは、可能な限りAIに任せる。経営会議でも、AIが分析した材料を前提に議論・判断するスタイルへ移行していけば、製品開発や顧客価値に、より多くのリソースを投下できる。結果として、生殖医療の発展により直接的且つ、迅速に貢献していると確信しています。
専門性が高い業界こそ、AI導入で価値を発揮する
実感として、「うちは専門的だからAIは向かない」と考える会社ほど、むしろ導入する価値が大きいということです。専門性が高い領域ほど業務が属人化しやすく、「この人しかできない」「プロジェクトリーダーだけが理解している」といった体制が続きがちです。しかしAIを使えば、そうした知識やノウハウを客観化し、再現可能な業務フローとして落とし込むことができる。これは小規模な組織から中堅・大手まで共通する課題だと思います。
私自身、「やらない選択肢はない」という思いで導入を決めました。最初から完璧を目指す必要はありません。小さく始めて段階的に広げれば、必ず成果が見えてきます。だからこそ、導入を迷っている企業にこそ一歩を踏み出してほしいと思います。
