議事録短縮から人材育成まで JAPAN AIが内外テックにもたらした安心と効率
- 専門商社

導入前の課題
- 半導体専門書籍を業務や教育に活かしたいが、知識を共有する仕組みが不足していた
- 現場で蓄積された膨大なナレッジや修理履歴が活用されず、属人的な対応に頼っていた
- 議事録作成や業務ヒアリングに膨大な時間がかかり、業務効率を圧迫していた
導入後の成果
- 「とりあえずAIに聞く」文化が根づき、AI活用への抵抗感が大幅に低下
- 独自教育システム「SEMIペディア」を構築し、人材育成や研修を短期間で効率化
- 議事録作成を2時間→10分に短縮し、200人規模の業務調査も従来の5分の1以下で完了
【企業紹介】
- 会社名:内外テック株式会社
- 資本金:18億6,361万円
- 事業内容:技術専門商社(半導体製造装置の部品の仕入販売、受託製造)
- 従業員数:222名(パート社員含む)
半導体製造関連の装置や部品を扱う専門商社として、業界を牽引してきた内外テック株式会社。グループ会社には、装置の組立やメンテナンスを担う内外エレクトロニクスを擁し、全国の半導体関連企業を下支えしています。半導体産業の急速な進化を背景に、日々変化する顧客ニーズへ柔軟に応えてきました。
同社では近年、業務効率化と人材育成の両面で課題に直面していました。会議の議事録作成や200人規模に及ぶ業務ヒアリングは膨大な工数を要し、また半導体分野の専門知識を短期間で定着させる教育体制にも課題が見えていました。
こうした状況を打破するために導入したのが、JAPAN AIのソリューションです。セキュリティ面への懸念をクリアしつつ、独自に開発した教育システム「SEMIペディア」を軸に活用を開始。議事録作成の短縮から教育資料の効率的な生成まで、業務のあり方そのものを変えつつあります。
今回は、導入の発起人としてプロジェクトを牽引した営業技術部 係長の能登さんとグループDX推進室 主任の須田さんに、導入の背景や実際の活用状況について詳しく伺いました。

▶︎導入前の課題
「信用第一」の商社に立ちはだかった壁…期待と不安のAI導入
➖➖➖JAPAN AI:AI導入を検討し始めた背景と、その際に感じた不安について教えてください。
➖➖能登氏・須田氏
内外テックでは、2021年頃からロボットやデータ分析等でAIについて検討やテストを始めていましたが、ニュースや業界の動きで生成AIが注目され始めた2023年春からは、LLM(大規模言語モデル)の本格導入の検討に入りました。
時代の流れを捉えたい気持ちがあった一方で、商社にとって「信用第一」は揺るぎない原則です。社内ナレッジを活用できることへの期待と、顧客から預かる情報の安全性をどう担保するかは最重要課題であり、セキュリティリスクへの不安は導入の大きなハードルでした。さらに、AIが誤った回答をする「ハルシネーション」への懸念や、使用量が膨らんで予算を圧迫するのではないかというコスト面の心配もありました。
➖➖須田氏
社内でも意見は分かれました。AIに強い期待を寄せる声がある一方で、「仕事を奪われるのではないか」と不安を口にする社員も少なくなかったのです。こうした温度差の中で、AI導入をどう社内に根付かせていくかが、まず大きなテーマとなりました。

比較表に並んだ5〜6社。最後に残ったのはJAPAN AIだった
各社のパンフレットなどを集めて検討し、最初に候補となったのは5〜6社のAIサービス。一覧表を作って各社の「できる」「できない」「価格帯」などを比較しました。2〜3社は実際に1カ月くらいのペースでトライアルも行いましたが、操作性に難があったり、画像や図表を交えて情報を扱うことができなかったりと、決定打に欠けていました。
最後にトライアル利用したのがJAPAN AIでした。幕張メッセ(千葉県)での展示会で「画像も出せますよ」と即答されたときの安心感が印象に残っており、他社が「社内で確認します」と言葉を濁す中、JAPAN AIはその場で言い切ってくれていました。システムの信頼性とセキュリティ対策も十分で、複数のLLMを柔軟に切り替えられる点や、要望に合わせてカスタマイズしてくれる姿勢、そして高精度のRAGを比較的自由に使用できることも評価の後押しとなり、最終的に導入を決断しました。
導入の背景にあった「人材育成」の課題…独自の教育システム開発構想
➖➖能登氏
AI導入のきっかけには、グループ全体の人材育成という課題がありました。子会社の内外エレクトロニクスでは半導体関連のエンジニアを多数抱えており、新人教育やビジネス展開時に短期間で高度な知識を習得させる必要があります。顧問である菊地正典先生(※)が執筆した20冊以上の専門書がありますが、その膨大な知識をどう活用すれば効率的な教育ができるのか。従来のやり方では限界がありました。
※日本の半導体黄金期に日本電気の半導体事業グループで統括部長や主席技師長を歴任し、その後は日本半導体製造装置協会専務理事や半導体エネルギー研究所の顧問を務めるなど、半導体業界の発展に多大な貢献を果たした半導体分野の第一人者。
そこで構想されたのが、菊地先生の書籍を勉強させたAIが半導体に関するどんな質問にも精度よく回答する「SEMIペディア」です。教育を効率化しつつ、知識の質を落とさないための答えを、AIに求めたのです。

※能登氏
▶︎導入後の変化
半年がかりの調査が3カ月に。AIがもたらした時間革命
JAPANAI:実際にJAPAN AIを導入してから、どのような成果や変化が見えましたか?
➖➖能登氏・須田氏
導入後、まず成果が見えたのは議事録作成でした。これまで会議2時間分の内容をまとめるのに丸1日かかることもあった作業が、今では10分足らずで完了します。さらに200人規模で実施した業務ヒアリングでも、録音データからの文字起こしと要約、アンケート情報をもとにした課題抽出と提案書のベース作成までをAIに任せることで、数百時間かかるはずの作業が大幅に短縮されました。従来であれば半年以上はかかっていたであろうプロジェクトが、わずか3カ月で終わったのです。
こうした時間削減の効果は、単なる効率化にとどまりません。たとえばメール文作成の場面では、「自分の考えをうまく言葉にできないときに、AIが代弁してくれる」といった声が社員から上がっています。思いつかなかった表現や切り口を提案してくれることで、業務の質そのものが向上しました。
➖➖須田氏
導入効果を最も実感したのは、大規模な業務調査です。グループ全体で200人以上に行った業務ヒアリング。1人30分〜1時間の内容を記録し、文字起こし・要約・課題抽出まで行うのは、従来であれば数カ月がかりの大仕事です。
JAPAN AIを使うことで、録音データからの文字起こしが瞬時に完了。さらに議事録を要約し、課題を「緊急度」や「重要度」ごとに整理するまでをAIが担いました。その結果、数百時間かかるはずだった作業が、わずか数十分〜数時間で完了。土日も休まず続けても半年かかっていたかもしれない作業が、3カ月くらいで終わった手応えがあります。

※画像:業務課題の優先度のマトリクス表。社員のヒアリングについて緊急度と影響度をAIが判断し対策を講じた。
内外テックの挑戦…教育を効率化し、未来につなげる「SEMIペディア」
➖➖能登氏
内外テックの取り組みを象徴するのが、この「SEMIペディア」です。顧問の菊地正典先生が執筆した専門書20冊以上をAIに学習させ、社員が自然な言葉で質問すれば、AIが参照元を明示したうえで回答を返してくれる。誤情報への不安を和らげつつ、必要な知識にたどり着ける仕組みが整いました。
SEMIペディアは単なる検索ツールではなく、書籍に含まれる画像やグラフも取り込んで、文字情報だけでは伝わりにくい概念も視覚的に学習できます。単なる社内ナレッジだけではなく、様々な書籍情報を交えての情報の掲載はJAPAN AIでも初めてだったようでとても苦労をかけましたが、その際も的確に応えていただけました。
さらに、教育担当者が良質な教材を持っていても、その内容をもとに適切なクイズを作るのは簡単ではありません。そこで教材をAIに渡し、「クイズ問題を作って」と指示するだけで、ベースとなる問題がすぐに生成されます。担当者はそれをブラッシュアップするだけで済むようになり、研修準備の負担が大幅に軽減されました。
今後はこのメソッドを生かして、社外向けの教育コンテンツとして展開する構想もあり、半導体教育の標準的な仕組みに発展する可能性を秘めています。

※画像:SEMIぺディアからの問いかけに、質問するだけでPDFとともに様々な情報の参照先を教えてくれる
➖➖能登氏・須田氏
定量的な成果と並んで大きいのが、社員の気持ちの変化です。
導入前は「AIに仕事を奪われるのでは」という声や、「セキュリティが不安」という懸念がありました。しかし実際に触れてみると、「仕事を助けてくれる存在」「安心して相談できる相手」としての側面が見えてきました。
特に印象的なのは「とりあえずAIに聞いてみよう」という文化が広がったことです。
上司から新しい指示を受けたとき、やり方が分からず戸惑っていた社員も、AIに相談することで「まず骨組みを作れる」「1週間でやりますと答えられる」という安心感を得られるようになりました。
また、「AIが出してくる分析結果は耳の痛いこともズバリ言ってくれる」という声も。人がまとめる資料では“良いことだけ”が並びがちな中で、AIは冷静に、手心を加えずに課題を指摘してくれます。業務改善の議論がより実質的なものになったと思います。
まだ道半ば。それでも広がり続けるAI活用と未来構想
内外テックのAI導入は、まだ道半ばです。それでも、議事録の時短や業務調査の効率化といった成果に加え、「とりあえずAIに聞いてみよう」という意識改革が着実に進んでいます。
AIの活用は議事録や教育にとどまりません。品質保証部門では過去の不具合データの分析に役立てられ、メンテナンス部門では20年分の修理履歴をAIが整理し、新人教育にも生かされ始めています。提案資料や会議資料の叩き台をAIが数分で生成することで、営業や管理部門でも成果が見えています。
将来的には、製造現場での活用も視野に入れています。部品表や図面をOCR(光学文字認識)で読み取り、AIが在庫シミュレーションを行うことで、在庫削減やトラブル防止につなげる構想です。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)との連携による自動化や、AIエージェントとしてのさらなる発展も期待しています。
