顧客との関係構築が一過性の対応ではなく長期的な価値提供を前提としたものへと進化する中、カスタマーサクセスの重要性はあらゆる業界・業種で高まっています。特に、法人向けサービスを提供する企業においては顧客企業のフェーズや業種、サービスを利用・管理する担当者の役割に応じて、対応すべき課題も複雑化しています。こうした現場のリアルに応えるには、すべてを人手でまかなおうとする従来型の体制では限界があります。そのため対応の質を保ちながら効率化・標準化を実現する手段として、AIの導入が注目されています。
本記事ではカスタマーサクセスの現場でAIをどのように活用できるのか、その具体的な方法と活用によって得られる効果、さらには実際の活用事例や導入時に注意すべきポイントまでを体系的に解説します。自社の業務改善や対応体制の見直しを検討している方にとって、実務に直結するヒントを得られる内容となっています。
AI活用で業務を効率化する5つの方法!活用事例やメリットから注意点までを解説
カスタマーサクセスにAIを導入する4つのメリット

カスタマーサクセスの業務にAIを取り入れることで、単なる業務の自動化にとどまらず、顧客対応の質やチーム全体のパフォーマンスを飛躍的に向上させることが可能になります。ここでは、AI導入がもたらす主な4つのメリットについて解説します。
- 顧客の期待に応える対応が可能になる
- 顧客の離脱兆候を早期に察知し対応できる
- ヒューマンエラーによるクレームやトラブルを防げる
- 作業の自動化により時間とコストを削減できる
顧客の期待に応える対応が可能になる
AIを活用することで、顧客ごとのデータをもとにニーズを的確に把握し、それぞれに最適な情報やサービスをタイミングよく提供できるようになります。過去の購買履歴や行動パターン、問い合わせ内容などを分析することで、画一的な対応ではなく個別性の高いサポートが可能になります。このようなパーソナライズされた対応は、顧客満足度の向上だけでなく企業への信頼や継続的な関係構築にも直結します。
顧客の離脱兆候を早期に察知し対応できる
顧客の行動データや利用状況をリアルタイムで分析し、不満や解約につながる兆候を早期に察知できます。これにより、対応の遅れや判断ミスといったヒューマンエラーを回避しやすくなり、トラブルが表面化する前に的確なサポートを講じることが可能になります。事前に顧客の不満を捉え、先手を打った対応を行うことはクレームの発生を未然に防ぎ、顧客との関係維持にもつながります。
ヒューマンエラーによるクレームやトラブルを防げる
AIは知識や経験の差に左右されず常に一定の精度で対応を行えるため、人為的なミスや判断のばらつきを排除できます。それにより対応の品質が安定し、ミスによるクレームやトラブルの発生を未然に防ぐことが可能になります。
作業の自動化により時間とコストを削減できる
AIを活用することで、問い合わせ対応や情報整理といった定型業務を自動化でき、人的リソースの負担を大幅に軽減できます。その結果、担当者は顧客への価値提供に注力できるようになり業務全体の生産性が向上します。また、知識や経験の不足を補うかたちでAIが適切な対応を支援するため、属人的な対応に頼らない安定した運用が可能となりコスト面でも高い効果が期待できます。
カスタマーサクセスにAIを活用する7つの方法

AIはカスタマーサクセスに関わるさまざまな業務に対して柔軟に組み込むことができます。従来は人手に頼っていたルーチン業務をAIが担うことで作業の自動化と対応の質・スピードの両立が実現可能になります。以下では、実際にどのような業務でAIが活用されているのか、その具体例を紹介していきます。
- 顧客からの問い合わせ対応を自動化
- オンボーディング時の顧客課題の分析と提案内容の作成
- 顧客の利用状況の分析
- ヘルプセンターやナレッジベースの自動運用
- カスタマーオンボーディングの進捗管理・自動通知
- CS対応履歴の要約・CRM自動記録
- 製品・サービスの改修・開発要件の抽出
1. 顧客からの問い合わせ対応を自動化
従来のカスタマーサクセス業務では、問い合わせ一件ごとに担当者が手作業で対応しており、多くの時間と工数を必要とするうえに、対応ミスや抜けが発生するリスクもつきものでした。加えて、対応までに時間を要することで顧客体験が損なわれるケースも見受けられました。
こうした状況を改善する手段としてAIを導入すれば、チャットボットなどによって即時かつ自動での応答が可能となり24時間体制での対応も実現します。またAIは社内に蓄積されたナレッジから、問い合わせの内容に合わせた回答を導き出すことができるため、対応の品質も安定します。
結果的に対応スピードが大幅に向上し、1日あたり1〜2時間分の業務時間が削減されると同時に、顧客満足度の向上にも寄与します。
2. オンボーディング時の顧客課題の分析と提案内容の作成
従来のオンボーディング業務では顧客の課題やニーズを正確に把握するため、担当者が過去のやり取りやヒアリング内容を手作業で分析していました。この作業は多大な工数を要し担当者のスキルにより提案の質に差が出る上、顧客ニーズの見落としやオンボーディング遅延による顧客体験の低下といったリスクも伴っていました。
こうした状況でもAIを活用する事で顧客との過去のやり取りやアンケート結果などを瞬時に分析し、潜在的な課題や成功の鍵となる要素を自動で抽出してくれます。また、AIは蓄積された膨大なナレッジや成功事例から顧客の状況に最も適した提案内容を導くため、パーソナライズされた質の高い提案書を迅速に作成することが可能です。
結果的に、提案業務にかかる時間と工数を大幅に削減しつつ顧客満足度の向上とオンボーディングの迅速化を実現できます。
3. 顧客の利用状況の分析
顧客の利用状況の分析はこれまで担当者の手作業に頼ることが多く、時間がかかるうえに見落としやバイアスが生じやすい状況でした。その結果、顧客の実際の行動やニーズを正確に把握できず施策や提案が的外れになるリスクがありました。
AIを導入することでWebサイトやアプリの利用ログ、閲覧履歴、クリックパターンなどの膨大なデータをリアルタイムに分析し顧客の関心や課題、離脱ポイントなどを自動で可視化できるようになります。さらに、過去の傾向や属性情報と照らし合わせて顧客ごとの行動パターンやニーズを予測することも可能です。
その結果、担当者が直感や経験に頼らずに、データに基づいた施策立案ができるようになり、顧客ごとの最適なアプローチや改善施策の精度が向上します。あわせて、施策実行後の効果測定も迅速に行えるようになり、マーケティングやプロダクト改善のPDCAサイクルを加速させる効果も期待できます。
4. ヘルプセンターやナレッジベースの自動運用
ナレッジ運用では記事の作成や更新が担当者の手作業に頼りきりになりやすく、更新が後手に回ったり情報が古くなったりするケースが少なくありません。その結果、顧客の疑問と記事内容がかみ合わず、検索しても課題が解決できないといった状況が発生しがちです。
AIを導入することで、顧客対応のログから記事候補を自動で抽出・要約しFAQやナレッジ記事の原稿を生成できるようになります。さらに、ユーザーの検索キーワードや閲覧履歴をもとに記事の内容や構成を継続的に最適化することも可能です。
その結果、ナレッジの作成・更新にかかる工数を大幅に削減でき属人化の解消にもつながります。あわせて、顧客の自己解決率が高まり問い合わせ件数や対応負荷の軽減にも貢献します。
5. カスタマーオンボーディングの進捗管理・自動通知
オンボーディングの現場では進捗状況やタスクの管理が担当者の手作業に依存しやすく、対応の抜け漏れや遅延が発生することが少なくありませんでした。さらに、顧客へのリマインドやステータスの共有もその都度手動で行う必要があり大きな工数がかかっていました。
こうした課題に対応する手段としてのAI活用により、顧客の行動データや利用状況をリアルタイムで監視し進捗状況を自動的に判定できます。あわせて、未完了のタスクや遅延が発生した場合にはAIが自動でリマインドやフォロー通知を送信することも可能です。
これにより、担当者による手動対応の必要がなくなり1日あたり数時間分の作業負担が軽減され、結果として顧客のオンボーディング完了率や定着率が向上し、解約リスクの抑制にもつながります。
6. CS対応履歴の要約・CRM自動記録
カスタマーサクセスにおける対応履歴の記録では担当者が手動で要約を作成し入力していたため、記録に時間がかかるうえ入力漏れが発生するケースもありました。また、要約の質やフォーマットにばらつきがあり、情報をナレッジとして活用するのが難しいという課題も抱えていました。
こうした状況に対しAIを活用すれば、通話やチャットのログを自動で要約し、あらかじめ統一されたフォーマットで記録を作成できます。さらに、その要約をCRMへ自動登録することで、履歴の一貫性と記録精度を高めることが可能になります。
その結果、記録作業にかかる時間が1件あたり数分から数十秒へと大幅に短縮され、対応品質の安定化にも寄与します。あわせて、過去の対応履歴の検索性と再利用性が向上し、チーム全体でのナレッジ活用も促進されます。
7. 製品・サービスの改修・開発要件の抽出
従来、製品やサービスの改修・開発要件は担当者が手作業でフィードバックを集約していました。そのため、情報の偏りや要望の見落としが発生しやすくニーズの反映や優先順位の判断が難航することがありました。
AIを導入することで顧客対応ログやアンケート結果、VOC(Voice of Customer)などのデータを自動で分析し、頻出する課題や改善要望を抽出することが可能になります。さらに、過去の対応履歴や開発履歴と照らし合わせて要望の重要度や緊急度を可視化することもできます。
その結果、開発要件の抽出や優先順位付けにかかる時間と工数を大幅に削減する事ができました。属人的な判断から脱却し、より客観的かつニーズに即した製品改修・開発が実現可能となります。
業務効率化と提供価値を高めるならJAPAN AI AGENT

JAPAN AI AGENTは、豊富な業務用AIエージェントをすぐに活用できる点が特長です。問い合わせ対応やナレッジ記事作成、オンボーディング管理、履歴要約といったカスタマーサクセス業務を対象に用途ごとに最適化されたAIが作成可能なため、導入初期から即戦力として活躍します。
さらに、既存のCRMやSFA、FAQシステムなどとの柔軟な連携にも対応しており、自社の業務フローに組み込むことでカスタマーサクセス業務全体の自動化と効率化を一気に推進することが可能です。多様な業務ニーズやシステム環境に柔軟に適応できる構造となっており、現場の負担軽減と顧客満足度の向上の両立を支援します。
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カスタマーサクセスにおけるAIの活用事例

カスタマーサクセスの現場では対応の質と効率を両立する手段としてAIの導入が進んでいます。単なる業務自動化にとどまらず、顧客一人ひとりに合わせた情報提供や先回りの対応が可能になることで、顧客との関係構築や継続利用にも大きな効果を発揮しています。ここでは実際にAIを活用したことで成果を上げている事例を取り上げ、その具体的な活用方法や得られた結果を紹介します。
- 解約予測と顧客維持を最適化に成功
- 初回応答時間が短縮と目標達成率が95%向上
解約予測と顧客維持を最適化に成功
ある企業では、従来の受動的なカスタマーサクセス体制では顧客の微細な変化に気付けず、解約の兆候を見過ごしてしまうという課題を抱えていました。特に、ログイン頻度の低下や問い合わせ件数の減少といった、顧客の行動上の変化が明確に現れる前段階での対応が難しく手遅れになってから解約意向を把握するケースが多く発生していたのです。
こうした状況に対応するため、同社はAIによる行動データ分析を導入し、顧客の取引履歴、エンゲージメントレベル、リアクション傾向など複数の指標をもとに、潜在的な離脱リスクを可視化しました。実際に顧客が解約に至る数週間から数ヶ月前の段階でAIがその兆候を高精度に検出できるようになり、顧客ごとのリスクレベル(高・中・低)に応じた分類と対処が可能になりました。
例えば、解約リスクが高いと判断された顧客に対しては個別のフォローや限定オファー、割引施策が提供され、特に重要度の高い顧客には担当者が事前に接触しパーソナライズされたサポートを実施。AIの判断に基づいた先回りの対応が定着したことで、顧客の離反を防ぐ具体的な行動が取れるようになりました。
その結果、解約率の最大18%削減という定量的な成果が確認され、AIは単なる予測ツールにとどまらず、顧客維持を主軸とした戦略の中核として機能するようになりました。顧客の行動変化を見逃さず的確に打ち手を講じる仕組みとして、企業全体のサービス改善にも大きく貢献しています。
出典:Customer Churn Prediction: AI That Identified At-Risk Accounts 47 Days Before Cancellation
初回応答時間が短縮と目標達成率が95%向上
とあるデジタル決済サービス企業では、B2BおよびB2C向けに多様な金融ソリューションを展開しており、日々多数の問い合わせが寄せられていました。しかし限られた人的リソースではすべての対応に即応するのが難しく、初回応答までに時間がかかるケースが常態化。さらに、過去に蓄積されたナレッジが十分に活用されておらず同様の質問への繰り返し対応が業務の非効率を招いていました。その結果、サポートチームの目標達成率にも影響が及んでおり、抜本的な業務改善が求められていました。
このような課題に対し、同社はAIによる自動応答システムを導入しナレッジベースと連携させることで問い合わせの自動処理を開始。AIが過去の問い合わせデータやFAQをもとに適切な回答を即座に提示し、担当者が対応すべきチケットの数を大幅に削減することに成功しました。実際に、導入初年度で約1万件を超える問い合わせをAIが処理し、サポート担当による対応が必要なチケットは5,000件以上減少しました。
その結果、初回応答時間は大きく短縮され、サポート体制全体のスピードと正確性が向上。チーム全体のパフォーマンスも改善し、設定していた対応目標の達成率は90〜95%まで上昇するなど、明確な成果が確認されています。AIを活用したことで、限られたリソースでも高品質な対応を維持できる柔軟な運用体制が実現されました。
出典:AI Gold Rush: 21 Digital Banking AI Case Studies in CX Transformation
カスタマーサクセスでAIを活用する際の注意点

AIの導入は業務効率化や顧客満足度の向上につながりますが、成果を得るには慎重な準備と判断が欠かせません。導入後に思わぬギャップが生じないよう事前の確認や検討が重要です。ここでは、導入時に押さえておくべき4つの注意点を紹介します。
- 導入目的を明確にする
- 目標達成に適したAI技術を選定する
- 導入費用の見積もりの確認
- 導入後の支援体制の確認
導入目的を明確にする
AIを導入する際に最も重要なのは「何を改善したいのか」を具体的に定めることです。例えば顧客からの問い合わせ対応を自動化したいのか、顧客ごとに適切な提案ができる環境を構築することで満足度を高めたいのかによって選ぶべきAIの機能や連携先は大きく異なります。
目的が曖昧なままでは、機能が過不足になったり運用の方向性が定まらず効果も出にくくなります。他社の導入例や評判に流されるのではなく、自社の課題と向き合ったうえで最適なAI活用の形を見出すことが導入成功の鍵となります。
目標達成に適したAI技術を選定する
AIを導入する目的が定まったら次に重要なのは、その目的に最も適した技術を選ぶことです。定型的な問い合わせを効率化したい場合には、自然言語処理に優れたチャットボットやテキスト応答型のシステムが有効です。
一方、顧客ごとに最適な情報を提供したいのであれば行動履歴やニーズを分析できる機能を備えたAIが必要です。目的と技術が噛み合っていなければ、導入しても期待した効果は得られません。
AIの活用自体が目的化しないよう、あくまで「何を解決するか」に軸を置いて技術を選定することが、成功への第一歩です。
導入費用の見積もりの確認
AI導入にあたっては、初期費用だけでなく運用後のコストも含めた総合的な見積もりが欠かせません。クラウド型は初期費用を抑えやすい反面、月額利用料など継続的な運用コストが発生します。加えて、自社の運用に合わせた柔軟なカスタマイズには制限がある場合もあり、導入前には必要な機能が標準で備わっているか、追加費用が発生しないかを見極めることが重要です。
また、既存システムとの連携を想定している場合は、API対応の柔軟性も確認が必要です。加えて、操作性が低いシステムは教育や運用に手間がかかるため導入後の負担も含めて判断することが重要です。
導入後の支援体制の確認
AIシステムをスムーズに運用するには、導入後のサポート体制が整っているかを事前に確認しておくことが不可欠です。サポートの内容や対応手段、連絡可能な曜日・時間帯まで明確にしておくことで、トラブル発生時の混乱を防ぐことができます。
特に、チャットボットのように初期設定や学習データの準備が必要なケースではその工程を含めて支援してもらえるかどうかが重要です。運用開始後も継続的に改善提案や定例サポートを提供するベンダーであれば、長期的な活用も安心です。
まとめ:AI活用でカスタマーサクセスを実現するならJAPAN AI

カスタマーサクセスにおけるAIの活用は、単なる業務効率化にとどまらず、顧客満足度の向上や解約防止、自己解決率の引き上げといった本質的な価値創出へとつながりつつあります。問い合わせ対応の自動化、ナレッジの最適化、オンボーディング管理など、AIが担える領域は着実に拡大しており人的リソースだけでは実現できなかったレベルでの顧客支援が可能になってきています。AIの強みと人間ならではの判断・共感をどう組み合わせるかが、今後のカスタマーサクセスの成否を左右します。
こうしたバランスの取れたAI活用を現場レベルで実現する手段として注目されているのが「JAPAN AI」です。CATS株式会社ではJAPAN AI AGENTの自動応答システムを導入したことで、1日あたり約100件に上る問い合わせのうちFAQレベルの内容を即時に処理可能となりました。それにより、サポートメンバーの残業時間を月50時間以上削減するという成果を上げました。さらに「気軽に質問できるようになった」という声が顧客からも多く寄せられ、対応のしやすさとユーザー体験の向上にもつながっています。カスタマーサクセスにおけるAIの真価を引き出し、業務負荷と顧客満足の両立を目指す企業にとって、JAPAN AIは信頼性と柔軟性を兼ね備えた有力な選択肢となっています。