業務効率化から新規事業立案まで! 公共交通の現場から生まれるAI活用
- コンサル業

導入前の課題
- 議事録や提案書の作成に時間を取られ、肝心の提案内容の磨き込みが後回しになっていた
- Pマーク、ISMSを取得しており、非公開情報を外部に預けることへの不安が常に存在した
- 担当者ごとに業務フローが異なり、「この人にしかできない」属人化が再現性の低さを招いていた
導入後の成果
- 議事録や営業日報を短時間で作成でき、移動中に完結させるフローも確立
- 社内アンケートで8割が「業務効率が改善」、9割が「今後も積極活用したい」と回答
- AI活用をきっかけに部署を越えた協働が進み、システム試作など新規事業の芽が生まれた
【企業紹介】
- 会社名:株式会社バイタルリード
- 資本金:4,500万円
- 事業内容:交通計画コンサルティング・システム開発
- 従業員数:70名(2025年9月1日時点)
株式会社バイタルリードは、地域公共交通分野に特化したコンサルティング企業です。自治体や交通事業者に向けて、自治体の交通計画策定支援や事業実施支援、ICTを活用した地域課題解決支援を行い、地域の公共交通網を支える役割を担ってきました。
一方で、その日常業務は膨大な文書作成に費やされるものでした。会議後の議事録まとめや資料の整形は属人的で、多くの工数を必要とし、本来注力すべき付加価値業務を圧迫していました。さらに、個人ごとの作業方法に依存する状況は再現性や効率性を欠き、業務フロー全体に課題を残していたのです。
そこで同社は、業務効率化と新しい価値創出を両立させる手段としてJAPAN AIの導入を決断しました。セキュリティ要件をクリアしつつ、議事録や提案書作成の負担を軽減し、日常的にAIを活用できる文化を育む。その取り組みをリードした、イノベーション事業部の三宅純人さんにお話を聞きました。

▶︎導入前の課題
「情報漏洩リスク」と「属人化」。導入前に横たわっていた現実
➖➖➖JAPANAI:AI導入を検討し始めた背景と、その際に感じた不安について教えてください。
➖➖三宅氏
私たちバイタルリードの業務は、自治体との協議に基づく協議録や提案書など、膨大な文書作成が中心です。地域の公共交通計画は、住民の生活に直結する重要なテーマですから、記録の正確性は絶対に欠かせません。ところが、会議やヒアリングの後に膨大な時間をかけて議事録をまとめることになり、本来注力すべき「提案内容の質を磨く」という最も大事な工程が、常に後回しになる状況が続いていました。
さらに大きな課題が、セキュリティリスクへの懸念です。私たちはPマーク(プライバシーマーク)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を取得しており、顧客から預かる交通計画や住民サービスに関わる情報を外部に預けることには、常に神経を使ってきました。このためクラウド上でAIを活用することに対しては、導入当初から強い慎重論がありました。
加えて、社内では属人化の問題も浮き彫りになっていました。議事録や提案書のまとめ方が人によって大きく異なり、「この人にしかできない」「この人に頼らざるを得ない」という状況が業務課題になっていたのです。効率化と標準化を進めながら、どうすれば安心してAIを取り入れられるのか…それが、私たちが向き合った最初の大きな現実でした。
比較したのは5〜6社。決め手は「安心感」と「幅広いエージェント」
導入検討の段階では、最初に候補に挙がったのは5〜6社の生成AIサービスでした。私たちが重視したのは、単なる便利さではなく、公共交通という分野特有の要件を満たせるかどうか。具体的には「議事録の文字起こし精度」「交通用語など専門用語への対応力」「厳格なセキュリティ要件」「既存業務フローとの親和性」「導入後の拡張性」など複数の点を軸に比較しました。
検討した他社サービスは、議事録作成など特定業務に特化したものが多く、汎用的な活用には限界を感じました。その中でJAPAN AIは、議事録だけでなく 資料作成や画像生成といった豊富なエージェントを備えており、部門ごとに異なるニーズをまとめて解決できる柔軟性 がありました。
さらに、プロンプトの工夫次第で幅広い業務に応用できる点、ノーコードで社内データを安全に取り込める仕組みも評価ポイントでした。トライアルで実際に触れてみて、「これならうちの業務にも馴染む」「安心して社内展開できる」という感覚を得られたのが大きな決め手です。単なる議事録作成にとどまらず、将来的な拡張性が見えたとき「長く付き合えるのはこのサービスだ」と確信しました。

▶︎導入後の変化
実務に効くJAPAN AI活用…日報、資料作成まで広がる使い道
➖➖➖JAPAN AI:実際にJAPAN AIを導入してから、どのような成果や変化が見えましたか?
➖➖三宅氏
一番強く感じているのは「仕事で使いやすい」という点です。ChatGPTなど単体のサービスも試しましたが、業務や目的に応じて複数のLLMを切り替えられる点や独自開発の高精度RAGによる拡張性は大きな違いでした。
例えば資料を読み込ませて「気になる点はどこか?」と確認すると、精査が必要なところを具体的に指摘してくれます。耳の痛い内容でも顧客への提示前にに気づけるのは大きな価値です。準備段階から精度を高められるので、実際の成果にもつながる活用ができています。日本語のニュアンスはClaude、クリエイティブはChatGPT、大量リサーチはGemini…と目的に合わせて安全にスイッチできるのは、JAPAN AIならではの良さだと思います。
営業日報でも、自社ならではの工夫を加えました。営業エリアが広いため、移動はほとんど車。これまでは夕方に帰社してから1時間ほどかけて日報を書いていましたが、今では車内でボイスメモに「◯◯役場で△△さんとこういう話をした」と話すだけ。その音声をAIに投げ込めば、クライアント名など固有名詞を正確に拾い、社内独自のフォーマットで日報を自動生成してくれます。
「帰ってからやる仕事」が「移動中に終わる」ようになり、地方の営業現場ならではの効率化を実感しています。

※日報作成用の雛形プロンプト
非エンジニアでも新規事業を試作 AIで生まれた他部署との会話と連携
私はエンジニアではありませんが、JAPAN AIを使って特定のデータ収集を効率化する簡易システムを試作しています。これは個人的な“感動ポイント”でした。HTMLを書かせ、クラウド上で動かす仕組みをAIと一緒に作り上げたのです。これまでなら専門部署や外部のエンジニアに頼らざるを得なかったことが、自分の手で形にできている実感があります。
さらに面白いのは、その過程で社内の会話が一気に増えたことです。普段やりとりのなかった部署の人とも「現場ではこういう仕様が必要だ」「こんな時にはこんなコード」と意見を交わすようになりました。100件近いやり取りを重ねる中で、専門知識と現場感が噛み合い、最終的にエンジニアが加わって仕上げていく。AIが媒介になって、これまで交わらなかった人材同士の力が結集していく感覚がありました。
専門外の領域にも挑戦できるようになり、「自分でもここまで作れるのか」という手応えを得られたのも収穫です。AIが“密な会話”を生み、社内で小さなベンチャーが立ち上がるような雰囲気ができつつある。新しいアイデアを形にするスピードが格段に上がり、まさにイノベーションの芽が育っていると感じています。

「8割が効率改善、9割が積極活用」その先の挑戦と“人ならでは”の強み
導入から一定の成果は得られていますが、正直にいえばまだ道半ばです。導入後の社内アンケートでは「8割が業務効率が改善した」「9割が今後も積極的に活用したい」と回答してくれましたが、それでも「もっとできるはずだ」という手応えの方が大きいですね。
たとえば営業の見積もり作業。公共交通の案件は複雑な条件が絡むため、1件の見積もりに膨大な時間がかかります。これをAIでシステム化できれば、外に出て提案する時間をもっと確保できるはず。やってみたのですが、なかなか難しくて…私の中では次の大きなテーマです。
また、社内の業務ごとにプロンプトをテンプレ化し、エージェントとして昇華させたい。今は個人の工夫に依存している部分が多いので、「この業務はこのプロンプトで回す」と標準化できれば、誰でも同じ水準で再現できるようになります。これはプロジェクトとして進めている最中です。
一方で、最近感じているのは「属人化って悪いことばかりではない」ということです。標準化できる部分はAIで効率化すべきですが、提案のクオリティやクライアントとの関係性など、経験や人柄がにじみ出る部分は、むしろ属人性を伸ばしていく方がいい。AIで時間を生み出すことで、社員一人ひとりの“その人ならでは”の強みを尖らせていける。効率化はゴールではなく、創造や挑戦に使う余白をつくるためのものだと考えるようになりました。
JAPAN AIを軸に、業務の標準化と属人性の両立を進めていく。これが、私たちが描いている未来の姿です。
小さく始めて、まず“感動ポイント”を掴むことから
弊社のスタッフも最初は半信半疑でした。でも、議事録をAIに任せてみたら、音声データを入れるだけで数分後に形になって返ってきた…その瞬間に「こんなに楽になるのか」と心底驚いたんです。そこから「もっと使ってみよう」という雰囲気に変わりました。
導入を検討されている方にも、まずは小さく試してみてほしいです。議事録でも日報でも、日々の業務の中で「AIって便利だ」と実感できる“感動ポイント”が必ず出てきます。その体験があると、社内の空気や文化も自然に変わっていくはずです。
分からないことが出てきたら、JAPAN AIに頼ればいいんです。壁打ちしているうちに、自分たちのやり方に合ったテンプレートやエージェントを整えてくれます。最初から大きなことを目指さなくても、少しずつ広げていけば成果は積み重なっていきます。
効率化はあくまでスタート地点。その先に生まれる余白をどう使うかで、会社も個人も新しい挑戦に踏み出せると思います。私たちもそこを目指しています。