DX認定制度は、デジタル技術の活用によって経営変革に取り組む企業を国が認定する制度として、近年あらためて注目を集めています。2024年12月にはデジタルガバナンス・コード3.0に基づく新基準での運用が開始され、2026年6月時点で認定事業者数は直近1年間で約1.35倍に増加しました。
しかし、DX認定制度とはそもそもどのような制度なのか、取得するとどのようなメリットがあるのか、認定基準や申請方法はどうなっているのかといった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、DX認定制度の定義や背景から、取得メリット、デジタルガバナンス・コード3.0に基づく認定基準、最新のウェブフォーム申請の手順、そして認定取得のポイントまで、JAPAN AIが網羅的に解説します。
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DX認定制度とは?
DX認定制度は、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。
経済産業省が制度の所管官庁であり、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が審査事務を担当しています。対象は法人・個人事業者を問わずすべての事業者で、業種や企業規模による制限はありません。2020年11月に制度が開始され、企業のDX推進を後押しする国の施策として位置づけられています。
DX認定制度が評価するのは、DXの「完成度」ではなく「準備の整い具合」です。経営ビジョンの策定やDX戦略の公表、推進体制の構築といった基本的な取り組みが行われているかを審査し、一定の水準を満たす事業者を「DX-Ready」として認定します。申請・認定にかかる費用は無料で、通年いつでも申請が可能です。
DX認定制度を取得した企業は、税制優遇や融資の金利優遇、補助金の加点といった実利的な支援を受けられるほか、認定ロゴマークを活用した対外的な信頼性の向上にもつなげられます。
DX認定制度創設の背景
DX認定制度が創設された背景には、日本企業のDX推進の遅れに対する政府の強い危機感があります。
2018年に経済産業省が公表した「DXレポート」では、老朽化・複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムがDX推進の障壁になると指摘し、このまま放置すれば2025年以降に最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性を「2025年の崖」として警告しました。IPAのDX推進指標の分析においても、2020年時点で企業の9割以上がDXに未着手または散発的な取り組みにとどまっていたことが明らかになっています。
こうした状況を受けて、政府はDX推進の法的基盤を整備する方針を打ち出しました。2020年5月に「情報処理の促進に関する法律」が改正・施行され、企業のDX推進状況を国が認定する仕組みが法制化されました。あわせて、企業が実践すべきデジタル経営のあり方を示す「デジタルガバナンス・コード」が策定され、その基本的事項への対応を認定基準とするDX認定制度が同年11月に開始されました。
なお、DXレポートが提起した「2025年の崖」問題は、単なるシステム刷新の課題ではなく、事業環境の変化に迅速に適応する経営能力の獲得を求めるメッセージでした。DX認定制度は、まさにその経営変革の出発点を企業に促す制度として設計されています。
「2025年の崖」問題の詳細やDX推進が進まない原因については、「2025年の崖とは?定義・課題・対策や進まない原因までわかりやすく解説」の記事で詳しく解説しています。
DX認定の取得状況
DX認定制度の取得は、制度開始以降着実に拡大しており、2026年6月時点で認定事業者数は直近1年間で約1.35倍に増加しています。
特に注目すべき点は、中小企業による取得の伸びです。中小企業の認定事業者数は直近1年間で約1.6倍に増加しており、大企業だけでなく中堅・中小企業にもDX推進の意識が広がっていることがうかがえます。業種別では情報通信業や製造業での取得割合が高い傾向にありますが、サービス業や小売業など幅広い業種へと取得の裾野が拡大しています。
また、経済産業省が認定事業者を対象に実施したアンケートでは、約70%の認定事業者が「DX戦略の推進に効果があった」と回答しています。認定取得が単なる「お墨付き」にとどまらず、実際の経営変革を推進する契機として機能している実態が見て取れます。
DXの基本的な定義や企業における推進の全体像については、「DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味・定義や進めるメリットを解説」の記事もあわせてご覧ください。
DX認定制度を取得するメリット
DX認定制度を取得することで、企業は対外的な信頼性の向上から金融支援・補助金の優遇、さらには経営課題の可視化まで、多面的なメリットを享受できます。
認定取得によって得られるメリットは、大きく以下の5つに分類できます。
- 企業価値やブランド力が向上する
- 税制優遇や融資などの支援を受けられる
- 補助金での加点対象になる
- DX銘柄の応募資格が得られる
- 自社のDX課題が整理できる
企業価値やブランド力が向上する
DX認定を取得すると、国の認定を受けた企業として対外的な信頼性が大きく向上します。
認定事業者には、経済産業省が定めるDX認定ロゴマークの使用が認められます。
このロゴマークはホームページや名刺、営業資料などに掲載でき、「DXに本格的に取り組んでいる企業」であることを視覚的に示す手段として活用できます。ロゴマークの使用にあたっては、経済産業省が定める使用規約への準拠が求められますが、認定事業者であればDX推進ポータルからロゴデータをダウンロードして利用可能です。
取引先や投資家にとって、DX認定は企業のデジタル経営への姿勢を客観的に評価する指標として機能します。
とりわけBtoBの取引においては、サプライチェーン全体のデジタル化が求められる場面が増えており、DX認定の取得が取引先選定の判断材料の一つとして重視されるケースも出てきています。採用活動においても、DXに積極的に取り組む企業姿勢をアピールすることで、デジタル人材の獲得競争において優位に立てる可能性が高まります。
企業のブランド力向上は、短期的な売上効果だけでなく、中長期的な企業価値の底上げにつながる重要な経営資産です。
税制優遇や融資などの支援を受けられる
DX認定を取得した企業は、金融面での具体的な優遇措置を受けられます。
まず、日本政策金融公庫による融資では、DX認定を受けた中小企業者が設備投資等に必要な資金を調達する際、基準利率よりも低い特別利率②が適用されます。
たとえば2025年5月時点では、基準利率2.65〜3.95%に対し、特別利率②は2.00〜3.30%です。通常の融資と比較して金利負担を軽減できるため、DX関連の設備投資を検討している企業にとって実質的なコスト削減効果があります。
なお、金利は定期的に改定されるため、最新の金利情報は日本政策金融公庫のホームページで確認することがおすすめです。
また、民間金融機関からの融資においても、中小企業信用保険法の特例として、信用保証協会による普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が認められます。自己資金が限られる中小企業でも、DX推進に必要な資金を確保しやすくなる仕組みです。
さらに、人材開発支援助成金(人への投資促進コース)では、中小企業が高度デジタル人材の育成訓練を実施する場合、訓練経費の最大75%、訓練期間中の賃金の一部として最大1,000円/時間が助成対象です。DX認定事業者であることが直接の助成要件ではありませんが、DX推進に必要な人材育成を支援する制度として活用できます。
なお、DX投資促進税制(税額控除最大5%または特別償却30%)は2025年3月末をもって終了しています。現在利用可能な税制措置については、最新の税制改正情報を確認してください。
補助金での加点対象になる
DX認定を取得した事業者は、ものづくり補助金をはじめとする各種補助金の申請時に加点対象として優遇されます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金では、DX認定事業者であることが審査における加点要素として明確に位置づけられています。補助金の採択は申請内容の総合評価によって決まるため、加点があることで採択率の向上が期待できます。特に競争率の高い公募回では、この加点が採否を分ける決定的な要素になり得ます。
IT導入補助金等においても、DX認定の取得が優遇措置の条件として設定される場合があります。補助金の公募要領は回ごとに変更される可能性があるため、申請前に最新の要件を確認することが重要です。
補助金の加点は、認定取得のために投じた社内工数に対して十分なリターンが見込める、費用対効果の高いメリットといえます。
DX銘柄の応募資格が得られる
DX認定の取得は、経済産業省と東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が共同で選定する「DX銘柄」への応募条件として必須です。
DX銘柄は、上場企業の中から企業価値向上につながるDXを推進し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を選定する制度です。2026年4月に発表されたDX銘柄2026では、DXグランプリ企業3社を含む30社が選定されました。選定企業は単なるIT導入にとどまらず、AIをはじめとしたデジタル技術を前提としたビジネスモデルの変革や経営の変革に果敢にチャレンジし続けている企業として評価されています。
上場企業以外の中堅・中小企業にとっても、DX認定の取得はDXセレクションへの自薦応募を可能にします。DXセレクションは、中堅・中小企業等のDX優良事例を選定・公表する取り組みであり、選定されることで業界内での認知度向上や新たなビジネスパートナーの獲得につながります。
DX銘柄やDXセレクションへの選定は、資本市場や取引先からの評価を高める強力なシグナルとして機能します。
出典:経済産業省「『DX銘柄2026』『DX注目企業2026』『DXプラチナ企業2026-2028』を選定しました」
自社のDX課題が整理できる
DX認定の取得プロセスそのものが、自社の経営ビジョンやDX戦略、推進体制を体系的に棚卸しする機会として機能します。
申請書の作成にあたっては、経営ビジョンとDX戦略の整合性、DX推進のための組織体制、デジタル人材の育成・確保の方策、ITシステム環境の整備計画、サイバーセキュリティ対策など、デジタルガバナンス・コードが定める基本的事項について自社の現状を言語化する必要があります。この過程で、経営層から現場まで関係者が一堂に会して議論を重ねることになり、DX推進における課題や優先順位が明確になります。
経済産業省のアンケートで約70%の認定事業者が「DX戦略の推進に効果があった」と回答している背景には、認定取得が目的ではなく、申請プロセスを通じた経営のコミットメントの可視化と論点整理が実質的な価値を生んでいるという実態があります。
DX認定の取得は、DXの完成を証明するものではなく、経営変革に向けた組織的な準備が整っていることを確認する手段です。
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DX認定制度の認定基準
DX認定制度の認定基準は、2024年12月から運用が開始されたデジタルガバナンス・コード3.0に基づいて設定されています。
デジタルガバナンス・コード3.0は、経営者が実践すべきデジタル経営のポイントを「3つの視点」と「5つの柱」で体系化した指針です。DX認定制度では、このコードが定める基本的事項への対応状況を審査し、一定の水準を満たす企業を認定します。上場・非上場、大企業・中小企業を問わず、すべての事業者に共通の基準が適用されます。
デジタルガバナンス・コードとは
デジタルガバナンス・コードは、企業のDX推進において経営者が実践すべきポイントを体系化した経済産業省の指針です。
2024年9月に公開されたデジタルガバナンス・コード3.0では、DX経営に必要な要素を「3つの視点」と「5つの柱」で整理しています。「3つの視点」は、DX経営の根幹をなす考え方として位置づけられています。
- 経営ビジョンとDX戦略の連動:経営ビジョンと表裏一体でDX戦略を策定・実行し、経営者が主導して具体的なアクションやKPIを設定する
- As is – To beギャップの定量把握:経営ビジョン実現の障害となるデジタル面の課題をKPIで数値化し、現在の姿と目指すべき姿のギャップを把握してDX戦略を絶え間なく見直す
- 企業文化への定着:目指す企業文化はDX戦略の実行を通じて醸成されるものであり、戦略策定の段階から見据えることが重要である
「5つの柱」は、認定基準の具体的な審査項目に対応しています。
- 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定:データ活用やデジタル技術の進化による社会・競争環境の変化を踏まえた経営ビジョンとビジネスモデルの方向性を公表すること
- DX戦略の策定:目指すビジネスモデルを実現するためのDX戦略を策定し公表すること
- DX戦略の推進:組織づくり、デジタル人材の育成・確保、ITシステム・サイバーセキュリティの整備を含む推進体制を構築すること
- 成果指標の設定・DX戦略の見直し:DX戦略の達成度を測る指標を定め、その指標に基づく自己評価と戦略の見直しを行うこと
- ステークホルダーとの対話:経営ビジョンやDX戦略の取り組み状況を「価値創造ストーリー」として投資家等に発信し、経営者自らがメッセージを発信すること
従来のデジタルガバナンス・コード2.0からの主な改訂点としては、DX経営による企業価値向上を強調する副題の追加、「3つの視点」の新設と「5つの柱」への体系再編、経営におけるデータ活用・データ連携の重要性の強調、デジタル人材の育成・確保やサイバーセキュリティ対策の一層の重視などが挙げられます。
社会全体の変革を視野に入れた、より広い視座での経営判断が求められるようになりました。
DX認定のレベル・区分
経済産業省は、企業のDX推進状況を段階的に評価する枠組みを設けています。
- DX-Ready(DX認定):経営ビジョンの策定やDX戦略・推進体制の整備を行い、DX推進の準備が整った状態。DX認定制度で認定される段階
- DX-Emerging(DX注目企業):認定事業者のうち、ステークホルダーとの対話や情報開示において優れたプラクティスを実践し、将来性が評価できる企業
- DX-Excellent(DX銘柄):デジタル技術を活用した優れた実績を上げ、業界内で模範となる企業。DX銘柄として選定される段階であり、その中から特に優れた企業がDXグランプリとして選定される
DX認定制度が対象とするのは、この段階の最初のステップである「DX-Ready」です。DXの完成度を評価するのではなく、デジタル経営に向けた準備が整っているかどうかを認定する入口の制度として位置づけられています。DX-Ready以上の認定を取得した上場企業は、DX銘柄への応募資格を得られ、さらに優れた実績を示すことでDX-Emerging、DX-Excellentへとステップアップしていく道筋が開かれます。
DX認定は、企業がDX推進の階段を上っていくための最初の一段目です。
DX認定制度の申請方法と流れ
DX認定制度の申請は、2025年8月27日からウェブフォーム申請に変更され、従来のWord・Excelファイルのアップロード方式と比較して大幅に簡素化されました。
申請は通年受け付けており、費用は無料です。法人・個人事業者を問わずすべての事業者が対象で、IPAが審査事務を担当し、経済産業省が認定を行います。
申請に必要な前提条件
DX認定の申請にあたっては、事前に満たしておくべき3つの前提条件があります。
1つ目は、サイバーセキュリティ対策の推進です。セキュリティ監査の実施概要をまとめる必要がありますが、中小企業の場合はIPA「SECURITY ACTION」の二つ星の自己宣言で代替できます。SECURITY ACTIONは、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度であり、二つ星は「情報セキュリティ基本方針」の策定と周知を行っている状態を示します。中小企業がこの方法を利用する場合、DX認定の申請時点で有効な宣言が必要であり、失効している場合は再度宣言を行う必要があります。
2つ目は、自社のホームページでの情報公表です。経営ビジョンやDX戦略、推進体制などの情報を自社のホームページ上で公表していることが求められます。申請書に記載する内容と公表内容の整合性が審査の対象です。
3つ目は、gBizIDプライムの取得です。DX推進ポータルでの申請にはgBizIDプライムによるログインが必要であり、アカウントの取得には数週間かかる場合があるため、早めの準備が推奨されます。
これら3つの条件は、申請書の作成と並行して準備を進めることで、スムーズな申請につなげられるでしょう。
申請から認定取得までのステップ
DX認定の申請から認定取得までは、以下のステップで進みます。
- 事前準備(目安:1〜2か月):サイバーセキュリティ対策の整備(中小企業の場合はSECURITY ACTION二つ星の自己宣言)、gBizIDプライムの取得、ホームページでの情報公表、申請内容の社内検討・経営層の承認を行う
- ウェブフォームでの申請書作成:DX推進ポータルにアクセスし、ウェブフォーム上で申請内容を直接入力する。各入力欄にはガイドが表示され、必須入力漏れやURL誤記などの形式的ミスは自動チェックされる。入力完了後、Word形式の申請書が自動生成される
- DX推進ポータルからWeb申請:入力内容を確認のうえフォームを送信し、申請を完了する
- IPAによる審査(標準処理期間:60日前):IPAが申請内容を審査し、必要に応じて補正の依頼が行われる
- 認定取得・公表:審査を通過すると経済産業省から認定が行われ、認定事業者として公表される
2025年8月27日のウェブフォーム申請への切り替えにより、従来必要だった申請チェックシート(Excel)の提出が不要になりました。申請書とチェックシートの重複記入が解消され、補足情報はウェブフォーム内の専用記入欄に必要時のみ入力する方式に変更されています。なお、審査内容および認定基準そのものに変更はありません。
申請プロセスの簡素化により、社内の作業負担を軽減しながら認定取得を目指せる環境が整っています。
出典:IPA「DX認定制度ウェブフォームでの申請受付開始のお知らせ」
有効期間と更新
DX認定の有効期間は、認定の適用日から2年間です。
認定を継続するためには、有効期限の60日前までに更新申請を行う必要があります。更新申請では、新規申請と同様にデジタルガバナンス・コードの基本的事項への対応状況が審査されます。認定取得時の内容をそのまま提出するのではなく、直近2年間の取り組みの進捗や新たな施策を反映した最新の内容で申請書を作成することが求められます。
また、認定期間中に事業者名、代表者名、住所などに変更が生じた場合は、変更届出書の提出が必要です。変更届出は認定の更新とは別の手続きであり、変更が生じた時点で速やかに届け出ることが求められます。
更新申請は、自社のDX推進状況を定期的に振り返り、戦略を見直す好機として活用できます。
DX認定取得のためのポイント
DX認定の審査を通過するためには、申請書の記載内容において経営ビジョンとDX戦略の一貫性を明確に示すことが最も重要です。
審査では、デジタルガバナンス・コード3.0の基本的事項に対応しているかが評価されますが、形式的な要件を満たすだけでは不十分です。経営ビジョンからDX戦略、推進体制、成果指標に至るまで、一貫したストーリーとして説得力のある申請書を作成することが求められます。
経営ビジョンとDX戦略の一貫性
審査で最も重視されるのは、経営ビジョンとDX戦略が一貫したストーリーとして整合しているかどうかです。
デジタルガバナンス・コード3.0の「3つの視点」の筆頭に「経営ビジョンとDX戦略の連動」が掲げられていることからも、この点が認定基準の核心であることがわかります。経営ビジョンが「何を目指すか」を示し、DX戦略が「そのためにデジタル技術をどう活用するか」を具体化するという関係性を、申請書の中で明確に描く必要があります。
審査で指摘されやすいのは、経営ビジョンとDX戦略が別々に記述され、両者のつながりが読み取れないケースです。「デジタル技術を活用して業務効率化を図る」といった抽象的な記述ではなく、自社の事業環境を踏まえた具体的なアクションやKPIを示すことが求められます。
たとえば、「製造業として品質管理の高度化を経営ビジョンに掲げる企業が、IoTセンサーによるリアルタイム品質モニタリングをDX戦略の柱に据え、不良品率の20%削減をKPIとして設定する」といった具体性が、審査を通過するための鍵です。
DX推進の具体的な進め方やステップについては、「DXの進め方とは?7つのステップと成功のポイント・失敗例を徹底解説」の記事で詳しく解説しています。
経営層のコミットメント
DX認定の審査では、経営者がDX推進に主体的に関与していることを示す必要があります。
デジタルガバナンス・コード3.0では、「ステークホルダーとの対話」の柱において、経営者自らが経営ビジョンやDX戦略について対外的にメッセージを発信することが認定基準として明記されています。DX推進を情報システム部門やDX推進室に任せきりにするのではなく、経営のトップが自らの言葉でDXへの意志を表明していることが重要です。
具体的には、取締役会でのDX戦略の承認、経営者による社内外へのメッセージ発信、DX推進に関する予算・人員の経営判断への関与などが、経営層のコミットメントを可視化する手段として有効です。自社のホームページに経営者のメッセージとしてDXへの取り組み方針を掲載することは、認定基準の「情報公表」要件を満たすと同時に、経営の関与を対外的に示す効果的な方法です。
経営層のコミットメントは、認定取得のためだけでなく、社内のDX推進を加速させる原動力としても不可欠です。
よくある不備と対策
| よくある不備 | 具体的な対策 |
|---|---|
| 経営ビジョンとDX戦略の整合性不足 | 経営ビジョンから逆算してDX戦略を策定し、両者のつながりを申請書内で明示する。「なぜこのDX戦略が経営ビジョンの実現に寄与するのか」を論理的に説明する |
| 記述が抽象的すぎる | 「業務効率化」「デジタル化推進」といった一般論ではなく、自社固有の課題・施策・KPIを具体的に記載する |
| ホームページでの情報公表が不十分 | 経営ビジョン、DX戦略、推進体制、成果指標など、認定基準で求められる情報を漏れなく公表する。申請書の記載内容とホームページの公表内容の整合性を確認する |
| SECURITY ACTION二つ星の未宣言・失効(中小企業の場合) | 中小企業がSECURITY ACTIONの二つ星でサイバーセキュリティ要件を満たす場合、申請前に宣言状況を確認し、失効している場合は再度宣言を行う。宣言の有効期限にも注意する |
| エビデンスの不足 | DX推進の取り組みを裏付ける社内資料や実績データを準備し、審査で求められた際に提示できるようにしておく |
これらの不備は、申請前に社内で模擬的な審査を実施し、第三者の視点でチェックすることで未然に防げます。特に、経営企画部門とIT部門が連携して申請書の内容を精査することが、審査通過の確度を高める実践的な方法です。
DX認定制度に関してよくある質問
DX認定の申請や取得に費用はかかりますか?
DX認定制度の申請・認定にかかる費用は無料です。経済産業省およびIPAに対して手数料や登録料を支払う必要はありません。
ただし、申請書の作成には社内の人的リソースが必要です。経営ビジョンやDX戦略の策定、ホームページでの情報公表、サイバーセキュリティ対策の整備(中小企業の場合はSECURITY ACTION二つ星の自己宣言)など、事前準備にかかる社内工数は発生します。外部のコンサルティング会社に申請支援を依頼する場合は、そのコンサルティング費用が別途発生します。
制度そのものの利用に費用がかからない点は、特に中小企業にとって取り組みやすい制度設計といえます。
DX認定の有効期限はありますか?更新は必要ですか?
DX認定の有効期間は2年間です。認定を継続するためには、有効期限の60日前までに更新申請を行う必要があります。
更新時にも、新規申請と同様にデジタルガバナンス・コードの基本的事項への対応状況が審査されます。認定取得後の2年間でDX推進がどのように進展したか、新たな取り組みや成果を反映した最新の内容で申請書を作成することが求められます。
更新申請を怠ると認定が失効し、認定ロゴマークの使用や各種支援措置の適用が受けられなくなるため、有効期限の管理は重要です。
中小企業でもDX認定を取得できますか?
DX認定制度は法人・個人事業者を問わずすべての事業者が対象であり、中小企業でも取得可能です。
実際に、中小企業の認定事業者数は直近1年間で約1.6倍に増加しており、取得のハードルは決して高くありません。DX認定は「DXの完成」を求めるものではなく、経営ビジョンの策定やDX戦略の公表、推進体制の整備といったDX推進の準備が整っていることを認定する制度です。
大規模なシステム投資や高度な技術導入が前提ではないため、自社の規模や業種に応じた現実的な取り組みを申請書に記載すれば、中小企業でも十分に認定を受けられます。日本政策金融公庫の特別利率での融資や信用保証の別枠拡充など、中小企業にとって特にメリットの大きい支援措置も用意されています。
DX認定制度は経営変革の第一歩
DX認定制度は、企業の「DXの完成度」を評価する制度ではなく、デジタル経営に向けた準備が整った状態を国が認定する制度です。
認定取得によって得られるメリットは、企業ブランドの向上や金融支援、補助金の加点など多岐にわたりますが、最も本質的な価値は申請プロセスそのものにあります。経営ビジョンとDX戦略の整合性を問い直し、推進体制や成果指標を言語化するプロセスを通じて、経営層のコミットメントが引き出され、組織全体のDX推進に対する意識が醸成されます。
2024年12月にデジタルガバナンス・コード3.0に基づく新基準の運用が開始され、2025年8月にはウェブフォーム申請への切り替えにより申請手続きも簡素化されました。DX認定制度を取り巻く環境は、これまで以上に企業が取り組みやすい状況に整いつつあります。
まずは自社の経営ビジョンとDX戦略の現状を棚卸しし、デジタルガバナンス・コード3.0の基本的事項と照らし合わせることから始めてみてはいかがでしょうか。DX認定の取得は、経営変革への確かな第一歩です。
DXのさらに先にあるAIを前提とした経営変革については、「AIトランスフォーメーション(AX)とは?DXとの違いや導入ステップを解説」の記事もあわせてご覧ください。


